439、自分の問題だから ページ43
コンコン。
数回ノックが響くと、理事長室のドアが開いた。黒いスーツを着たガタイの良い男だ。
「……ベルナルド様、本当に野放しにしてよろしいのですか？」
「構わん。放っておけ」
「ですが…」
「放っておけと言っている。余計な口出しをするな」
ベルナルドの形相にSPもこれ以上は口出しをせず、真っ青になって頭を下げた。
そんなSPを一瞥し、ふと窓の外に目を移す。
「…愚かな女だ」
すると、ポツリと窓を叩きつける音が聞こえた。
「……」
降り出す音が嫌でも耳に入りながら、気にも止めないそぶりでデスクに視線を落とした。
Aは髪飾りの捜索を開始した。この辺りに落ちたのではないかと予測した場所を手探りで探す。
(バカみたい。私ばっかり舞い上がっちゃって)
心の中で自分を嘲笑しながらも、探す足取りは止めなかった。
「A！やっぱり僕も一緒に探すよ」
遠くからフロイが呼びかける。
迷惑はかけられないし、これは自分の問題だからと、フロイには手出ししないように頼んでいた。
「平気！自分で見つける！ありがとう！」
そう言って譲らないAの姿に、フロイはどうしてそこまで、と思った。
先程だってそうだ。
庭に落し物をしたから探させて欲しいと、フロイしか許可を得られそうな人がいないので、両手を合わせて頼み込んできたのだ。
気圧されながらも頷くと、血相を変えて走り出した。あんなに必死な彼女の姿を見るのは珍しかった。
枝をかき分けるたびに、Aはため息をこぼす。
「ここにもない…」
額に浮かび上がる汗を拭う。
手がボロボロになりながらも、頭に葉っぱがくっついても、やめようとはしない。
その時、頭に雫が一粒落ちてきた。
「げ…降って来たかぁ」
パラパラとまばらに、次第に身体中に打ち付ける雨に顔を歪める。生憎傘は持っていない。
災難続きだ。
いや違う、自分から災難に立ち向かいに行ってるだけだ。
私はどうしてこんなに必死になって探しているんだろう。あんなに酷いことした人から貰ったものを。
あの人は、もう昔のあの人じゃない。
変わってしまったんだ。だから私も忘れた方がいい。
(そのはずなのに…)
また一つ、記憶が思い起こされる。
あの髪飾りを贈ってもらったのは、ちょうど10年前だった。
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紅葉 - あああさん» コメントありがとうございます！更新及び返信が遅くなり大変申し訳ございません。亀更新になるとは思いますがこれからも頑張ります！ (2020年3月3日 3時) (
レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
あああ - 何度も読み返ししてます！！紅葉さんの作る話が面白くてすごく続きが気になります！このシリーズが好きで毎日チェックしてます笑ヒロトが特に好きなので出てくる度にうぉぉおってなります更新いつまでも待ってます！！無理せず更新頑張ってください！応援してます (2020年2月11日 20時) (レス) id: de8812076d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年12月4日 0時
