433、潜入 ページ37
誰も居なくなった医務室は酷く静かだった。
(まさか倒れるなんて…。最近色々あったし、疲れが一気に来たのかな)
寝不足だったとはいえ、これ以上は眠れない。
ベッドの隣に置かれた鞄からスマホを取り出す。
『今から病院潜入作戦を開始します！』
先程明日人から来たメッセージだ。行動とはこのことだったらしい。
フランス代表の入院している病院に潜り込み、オリオン財団の残した証拠をつかもうとしている。
オリオンのことだから、証拠となるものは既に抹消してあるのではないかとか、潜入なんて大丈夫なのかとか…色々と不安だが、祈るしかない。
スマホを見ていくと、フランス代表の試合棄権について、ニュースに大々的に取り上げられていた。
中には「フランスチームの健康管理能力の低下」だの好き勝手書いたコメントも見られる。
だが先程も、それを理由にフランスの不戦敗とされてしまった。
違うのに、そんなんじゃないのに。
フランス代表の人たちは、今頃ベッドの上で泣いているかもしれない。
とにかく、今は朗報を待つのみ。
と。
「！来た…！」
『食中毒の証拠になりそうなフランスパンを譲ってもらった』と明日人からのメッセージ。
フランスチームの一人が後で食べようと残していたらしい。何という不幸中の幸いだ。
「ああ…良かった」
これで、フランスチームの落ち度ではないと証明できる。心の中で明日人たちを讃えた。
その時、スマホの画面に速報が入った。
『フランス代表専属シェフ緊急会見』
その文字を見た途端、嫌な予感がした。
記事に貼り付けられていたのは、シェフの男性が謝罪会見を行なっている動画だった。
『私は日本との試合の前日、選手に生牡蠣を食べさせてしまいました。先程、その生牡蠣から食中毒を引き起こす菌が発見されました。選手の皆さんに悲しい思いをさせてしまった…本当に申し訳ありません！』
やられた。先手を打たれた。
こちらの手で不正が発覚される可能性に備えてシェフを買収して、嘘の会見を開かせたんだ。
「…ああ、もう…」
また先回りされた。
真実を暴こうが、全て捻じ曲げられてしまう。
心が折れそうになる。
呆然としているAを叩き起こすように、再びスマホが鳴った。
今度はフロイからの電話だ。
『A、大丈夫？光から倒れたって聞いて』
「私は平気。それより…」
こうなってしまった以上、私だけ寝ているしかないのが、どうも気持ちが悪い。
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紅葉 - あああさん» コメントありがとうございます！更新及び返信が遅くなり大変申し訳ございません。亀更新になるとは思いますがこれからも頑張ります！ (2020年3月3日 3時) (
レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
あああ - 何度も読み返ししてます！！紅葉さんの作る話が面白くてすごく続きが気になります！このシリーズが好きで毎日チェックしてます笑ヒロトが特に好きなので出てくる度にうぉぉおってなります更新いつまでも待ってます！！無理せず更新頑張ってください！応援してます (2020年2月11日 20時) (レス) id: de8812076d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年12月4日 0時
