397、貴公子の目 ページ1
＿＿ぐいっ。
ルースたちからの質問攻めに困っていると、誰かに強く体を引き寄せられる。
驚いて振り返れば、タツヤがAの腕を引いていた。
まだユニフォームのままということは、まだロッカールームに足を運んですらいなかったらしい。
それよりも今気になるのは、タツヤが不機嫌そうに見えることだ。
「何してるの？もうみんな戻ってるけど」
「ご、ごめん…」
にこりともせずAの目を見るタツヤ。彼のその綺麗な瞳も今は恐ろしいものに感じた。
「行くよ、A」
タツヤが歩みを進めるのと同時に、Aの足も動く。
「えっ…ちょっと…！」
後ろに目をやると、ルースやマリクはぽかんとした表情でこちらを見ていた。
Aの後ろ姿を見ながら趙金雲が口を開く。
「……結局、あのお方の思惑は全て外れてしまったということですね」
「え？」隣にいた子文が聞き返す。
「うちの選手たちは、そう簡単にあちら側の思惑通りになんてなりませんよ」
にんまりと笑って言う。携帯に写された通話履歴の「ベルナルド・ギリカナン」の文字を見ながら。
自分たち以外誰もいない薄暗い廊下を、引っ張られながら進んでいく。
(もしかして、私が困ってたのを見て助け船を出してくれた…？)
とはいえ置いてきてしまった者たちのことも気になる。それにまだルースやマリクに聞きたいこともあった。
すると、タツヤはピタリと立ち止まる。
「…A」
「は、はい」
急に名前を呼ばれて驚いた。
というか、久々に呼んでもらえたことに驚いたのかもしれない。
「顔、痛む？」
「！？」
腕を離して、Aの顔を覗き込む。
「さっきの試合でボールぶつけられただろ。傷、開いてない？」
心配してくれているのは分かってる。
でも近くない！？
鼓動が聞こえてしまうのではという位、タツヤの顔がすぐそばまで来ている。
正直心臓に悪いので「さっきつくし先輩に手当してもらったから平気」と言うと、
「そう…」タツヤはここで一息ついたように見えた。
が。
「……それと、アースと随分仲良さそうに話してたけど、どういう関係？」
まだ質問攻めは終わっていなかった。
……だよね、普通そこ気にするよね。
「まだ俺たちに隠してることがあるんじゃないか？」
あります…大いに。
「……何があったか、俺には言える？」
とうとう今まで起きたこと全てを誰かに説明しなければならない状況まで来てしまったのか。
この貴公子の目は誤魔化せない。そう直感した。
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紅葉 - あああさん» コメントありがとうございます！更新及び返信が遅くなり大変申し訳ございません。亀更新になるとは思いますがこれからも頑張ります！ (2020年3月3日 3時) (
レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
あああ - 何度も読み返ししてます！！紅葉さんの作る話が面白くてすごく続きが気になります！このシリーズが好きで毎日チェックしてます笑ヒロトが特に好きなので出てくる度にうぉぉおってなります更新いつまでも待ってます！！無理せず更新頑張ってください！応援してます (2020年2月11日 20時) (レス) id: de8812076d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年12月4日 0時
