342、嘘 ページ46
「アメリカ戦の時、見に来てくれてたよね。ありがとう」
「スペイン戦からずっと見てたよ。A、強くなってたね。びっくりした。あの「上手くならないよ〜」ってずっとぐずってた君が… 」
「…それはお互い様でしょ」
また余計なこと思い出すんだから、もう。
いや、今はそれよりも…
「…さっきの試合、おめでとう」
クラリオたちのことももちろん気がかりだが、正々堂々戦って勝利を収めたフロイを祝福したい気持ちもあった。
「…見ててくれたんだね」
フロイはAの傷だらけの顔をしばらくじっと見つめた後、おもむろに口を開いた。
「……君に、謝らないといけないことがあるんだ」
「何？」
何かされたっけ？と思い当たる節を思い出そうとするが、全く分からない。
「僕らが婚約したって、嘘だから」
は…？とAは目を見張る。
嘘？
…フロイが？
でも何で？
そんなことして、何になるというのか。
いくら考えてもわからないので、直接聞くしかなさそうだ。
「…どうして？」
「……ごめんね」
フロイはそれ以上何も言おうとしない。
何で答えてくれないの？
沈黙が流れ、Aは居ても立っても居られなくなり、口火を切った。
「…ごめん。今、急いでるから」
そう言い残して、フロイの前から去っていく。
後ろのフロイがどんな顔をしているか、見れなかった。
嘘をついたフロイに怒ってるんじゃない。
私はフロイのことを何も分かってなかったのかもしれない。そんな自分に一番腹が立った。
走り続けていると流石に疲労が溜まり、壁に手をついて息を整えた。
Aの中で気がかりなこととしてフロイが加わった。
どうしてフロイはいきなり婚約が嘘だなんて告白してきたんだろう？
それにフロイの見せてくれた婚姻届は一体何だったんだ？
まだ分からないことが多過ぎる。
どれも私に鮮明な昔の記憶があれば済む話なのに…
…今度、どんな顔してフロイに会えばいいんだろう。
はあ、とため息をつき、気持ちを切り替えようとする。
(今はとにかく、明日人の手がかりを一つくらい掴まないと)
次第に呼吸も落ち着いてきたので、また捜索を再開しようとしたその時。
「西村A」
「え…？」
知らない男性の声がして後ろを振り返ると、黒服の男が立っていた。
「…！？」
危険を察知し逃げようとするが、男が素早くハンカチを伸ばす。
それを口に当てられた途端、抵抗する間もなくAは意識を手放した。
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紅葉(プロフ) - 夜空さん» コメントありがとうございます！楽しみにしていただいてとても嬉しいです！これからも更新頑張ります！ (2019年9月29日 11時) (
レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - とても面白くて新しい更新を楽しみにしてます！タツヤの恋も応援したい！ヒロトの恋も応援したい！どうなるの〜汗 (2019年9月29日 2時) (レス) id: d246f2b775 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ドルチェさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです！これからも更新頑張ります！！ (2019年9月23日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
ドルチェ - 紅葉さん,いつも楽しみにしてます！これからも拝読させて頂きます！頑張ってください！ (2019年9月23日 12時) (レス) id: 697128a6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます！アツヤの登場でさまざまな人間関係が大きく変わっていく、ということをテーマに書いていく予定ですので、楽しんでいただけると幸いです。これからも頑張ります！ (2019年9月14日 8時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年9月8日 22時
