263、兄として ページ16
一波乱あった後、場所は誰も居なくなったミーティングルームにて。
アツヤは目の前にいる人物に向けて顔を歪ませていた。
アツヤ「…は？何でそんなこと聞くんだよ」
とにかく答えて欲しい。
前からそうだったけど、どうして彼女にあんな態度を取るのか。
アツヤ「…だっておもしれーんだもん、あいつ」
面白い…か。それはつまり？
アツヤ「…なんかいじめたくなるんだよな、ああいう自分に自信持ったプレイしてない奴」
…確かに彼女からは自信を感じられないな。
アツヤ「何で最初俺が代表に選ばれなくてあんな女が選ばれたのかって考えたら、すげーイライラするし」
こら、そんな言い方しない。
…でも…
士郎「…アツヤ、何だかんだ言ってAさんのこと、よく見てるんだな…」
言っていることはいじめっ子のようだが、Aの人柄は、アツヤもちゃんと理解している。
その事実に士郎は少しだけ、安心した。
Aの部屋のドアから丁寧なノックの音が聞こえた。
ドアを開けると、そこに立っていたのは吹雪兄だった。
貴女「吹雪さん？」
士郎「Aさん、ちょっといい？」
貴女「あ…はい、どうしました？」
士郎「…少しだけ、付き合ってくれない？」
士郎から宿舎の外へ連れて来られ、二人並んでぶらぶらと歩いている。
昼間は暖かいと言っても、日が暮れるとほんのり風も冷たくなっていた。
士郎「…ごめんね。急に連れ出して」
貴女「それは大丈夫ですけど…どうかしたんですか？」
士郎「たまにはこうしてAさんと話したかったんだ」
考えてみれば、吹雪と二人で話すことは今まであまりなかった。
すると、沈黙を作る間も無く士郎が口火を切った。
士郎「…アツヤがあんなんで…ごめん」
兄として弟の無礼を申し訳無いと感じていた士郎に対して、いえ、と首を振るしか出来なかった。
…あの子は…白恋戦の時から私にあんな感じだったから…。
士郎「…あんな態度だけど…アツヤがAさんを嫌いなわけじゃないから」
貴女「…冗談ですよね？」
士郎「本当だよ」
貴女「…そうかなぁ…」
アツヤを見ている分にはとてもそんな風には見えないが、士郎が嘘を言っているようにも見えなかった。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
