天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。4【オリオンの刻印】

185、絶好のチャンス ページ37

壮行会が始まって割と時間が経って、ヒールで歩くことも少しずつ慣れてきた。

でも、最初の方ずっと張ってただけに今更少し疲れてきたかも。

…なんて思っていると。

頰に冷たいものが触れた。

貴女「ひゃ⁉」

体にシャキッと力が戻った。

バッと後ろを振り向くと、風丸がジュースの入ったグラスを両手に立っていた。

貴女「か、風丸さん…！」

風丸「お前、疲れてきてるんだろ」

貴女「…よ、よく分かりましたね…」

「まあな」と返しながらグラスを渡してくれた風丸。

風丸「慣れない状況だから、無理もないけどな」

貴女「そうなんです…何か力んじゃって」

でも、豪華客船でのパーティーなんて小さい頃とかよく憧れてたシチュエーションなんだよね。

子供の頃の想像通り、会場全体がキラキラと輝いていて…
ここにいる人みんな別世界にいる人みたいで…

貴女「…みんなまでいつもとは違っていて、一々理解が追いつかないというか…」

風丸「…みんなたまには素直になりたいんだろう」

貴女「え？」

風丸「いつもは憎まれ口ばかり叩いてる奴でも、今日くらいは優しくしようって思ったんじゃないか？」

貴女「…そうなんですかね？」

風丸「だからお前も、驚かずに素直に受け入れてやってくれ」

貴女「…でもどうして急に優しくしようなんて思ったんでしょうか」

風丸「今日は優しくできる絶好のチャンスだからな」

貴女「？」

風丸もAをじっと見つめ、言った。

風丸「…坂野上の言う通り、本当に似合ってるよ。だから素直に喜べ」

貴女「…あ…ありがとうございます…」

もう、混乱してきた…

貴女「…風丸さんまで今日は優しいですね」

風丸「…俺はいつも優しいだろ」

貴女「いたたた！す、すみません‼」

頰をつねられた。

風丸「…お前に素直になって損した」

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