天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。11【オリオンの刻印】 (ページ46)

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540、旅立ちの日ページ46

シャドウ・オブ・オリオン戦という大波乱が幕を閉じた後。ユリカはAにこう言った。

＿＿＿君があんなに粘り強いなんてね。驚いたよ

＿＿＿いやあ。自分でもあそこまで出来るとは

Aがそう返すと、ユリカは目をぱちくりさせた。

『そうなの？』

『今までいっぱい失敗したり、挫折しそうにもなってきたからね。自信を失いかけたことだって』

『それなのに、あんな力を？』

『その経験が、私を強くしてくれたんだと思う。人って、失敗するから成功もするんじゃないかな』

つまづいても、その先にヒントがあるって思えるようになった。そしてその分、成功した時が嬉しいって。

『失敗ばかりの自分を責めたこともあったけど、今は、試行錯誤するのが楽しいんだ！』

『楽しい…か』

ユリカにとっては、感じ慣れない気持ちらしい。けどこれから、色んな感情を抱いていくのだろう。

『完璧じゃないなりに、私は私に出来ることを全力でやっていきたい。そう思えるようになった』

Aが笑うと、ユリカも微笑んだ。

『A。私たち…もう少し違う出会い方をしてたら、良い友達になれていたかもね』

澄み切った青空を見上げながら、どこか寂しそうに、ユリカが呟く。

『戦いが終わったらみんな友達だよ』

『…えっ』

『日本にはね、昨日の敵は今日の友って言葉があるんだよ。あれ？ロシアにもあるのかな…』

『…君って、やっぱり変な子だね』

『えっ、唐突！』

しかし、唐突な悪口(？)にも慣れつつある自分が恐ろしい。

『でも、良いと思うよ。君のそういうところ』

『え、そうかな！？ありがとー！』

『あはは』

本当の笑顔を見せたユリカは、それはそれは可愛らしかった。

失敗も前向きに考えられるようになった。
そんな今の私だから、羽を広げて、飛び立つ時だと思う。

今日は、空が澄み切っていた。
旅立ちの日に相応しい、良い天候。

「もしもし、おじさん？今空港に向かってるとこ。いいって、今日大事な仕事なんでしょ？」

片手には鞄、もう片手にはスマホ。
電話越しとはいえ、御堂院の声を聞くのは久々だった。

「うん。ありがとう。私たち、優勝したよ」

歩きながらはきはきと話をする。
不思議だ。以前はメールを送るだけで緊張してたのに。これも、私が成長したってことかな。

「でも、私はまだ満足してないよ。これからもやることはたくさんあるからね」