536、選んだ道 ページ42
私は、前よりは私を知れた。自分の長所も、弱さも。
それはきっと監督や、みんなだって同じ。
今日この瞬間、私たちが選んだ道は、間違ってなかったって胸を張って言える。誰に否定されようとも。
私がイリーナさんを許せるまでは、まだ時間がかかると思う。
けどこの人がいなければ、なかった出会いがある。その出会いもまた、私を変えてくれた。
それは、この人に感謝していることだ。
「でも私、あれで終わりだとは思ってません。今日のはみんながいてくれたからこその結果だから」
私はもう、私に負けない。
誰に何と言われようと、自分に限界はないって信じたい。
誰かからたくさんのものを貰ってきた分、私もそれと同じくらい…いや、それ以上のものを誰かに返していきたい。
「出来ることをします。一歩ずつ、確実に」
すると、心なしか今まで聞いたことのないような優しい声で、呟かれた。
「…あの子があなたに惹かれた理由。今なら少しだけ、分かる気がするわ」
「…え？」
その時。
「待ってくれ！」
走って来たのは、フロイとベルナルド。
Aは邪魔にならないように隅へ避けた。
「罪は私にも…」
「おだまり！」
ベルナルドが声を張り上げようとすると、イリーナがそれを止めた。
「私の言いなりだったあなたが出しゃばる必要はない。あなたなら、ここからオリオンを立て直すことなど造作もないでしょう？あの人の夢を叶えてあげて」
「ママ…」
「ベルナルド、フロイ、元気でね」
最後は、二人の母としての言葉だった。
「母さん！父さんが信じたものは、これだったんだね。僕には見えたよ、二人が目指したものが」
フロイは母の背中に訴えた。
そしてベルナルドも。
「人が信じ合える日は、きっと来るさ」
「だといいわね」
イリーナはスコーリオたちと共に、その場を後にして行った。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2020年4月6日 19時
