527、いくつもの約束 ページ33
次々に流れ込んでくる、数々の記憶。
＿＿＿私たち、勝ちます！今度こそ絶対に約束を守りますから！
＿＿＿オリオンとの因縁がどうあれ、監督のしたことは絶対に誇れることです。それをイリーナさんにも分かってもらいます。もちろん私たちのサッカーで。だから安心してください
＿＿＿目指すよ。奇跡の天使と呼ばれても恥ずかしくない選手を
私は今までたくさんの人と、いくつもの約束を重ねてきた。
このままじゃ、また約束を破ることになる…
そんなの、やだ。
(ああ、そっか)
自分の姿を見ていて、ようやく気づいた。
今まで私の中にあった憤りの正体が。
ずっと悔しかった。
オリオン財団に？違う。自分に負け続けていた自分に。
私は今まで、自分に負けてばかりだった。
自分の限界を、自分で決めつけてた。
けど、もう私は変わるって決めたんだ。
昨日よりも今日、今日よりも明日、強い自分になるために。
＿＿＿起きて。まだこんな形で終わるわけにはいかない。
そうだ、まだ終われない。
＿＿＿起きろ自分！！
はっ。
「…ゴホッ…」
何とか意識を取り戻すことはできた。
まさか過去の自分の奮闘に助けられるとは。
「いっ……た…」
体を少しでも動かそうとしたら、悲鳴を上げる。
でも、すごく痛いはずなのに、今よりもっと、辛かった時があったな。
誰かと離れ離れになった時の方が、もっと苦しかった。涙が止まらない程苦しかった。
せっかくみんなと、心通じあえたと思ったのに、このまま、終わるなんて…
「ここまでね、思ったより手こずったわ」
Aを見下ろし、イリーナが呟く。
目の前に、髪飾りが落ちていた。
それに手を伸ばし、手に取ると、私は眉を下げた。
土で薄汚れ、金具は壊れ、もう使いものにはならない状態だった。
(ああ、せっかく貰ったものなのに…)
ごめんなさい。心の中でベルナルドに謝罪する。
でも、先程彼の口から出たのは、最終的には謝罪の言葉ではなかった。
＿＿＿ありがとう。
あの言葉が、じんわり胸を熱くする。
私もいつの間にか、誰かに感謝されるようになったんだな。
「う…」
体を起こそうとすると、何やら騒がしいことに気がついた。
頑張れ。間違いなくそう聞こえた。
「…！？」
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作者名：紅葉 | 作成日時：2020年4月6日 19時
