515、真の狙い ページ21
大きな爆発音と共に、スタジアムの端が崩壊し、煙が上がった。
「な、何！？」
遮光性の天井に覆われ、スタジアム全体が薄暗い空間に包まれた。
観客席では武器を持った兵士たちが進攻し、人々を制圧している。
FFIは中断。
それは革命が始まる合図だった。
スタジアムの一角に、大きくホログラムが浮かび上がる。そこに写されている人物が話し始めた。
『よく聞くがいい。すさんだ世界の住人たちよ』
「イリーナさん…！？」
ホログラムに投影されているのはイリーナ。
「母さん…」悲しそうな、フロイの呟きが聞こえた。
イリーナは予めスタジアムの至る所に爆弾を仕掛けていたらしく、誰も手も足も出ない状況に陥った。
『このスタジアムは、世界変革への始まりの場所になるのだ。ここには全世界各国の人間が集まっている、私はこのスタジアム全員を人質として、全世界と取引をする』
場内は静まり返り、Aたちはホログラムをじっと見つめる。
その時。
『これは！？』
驚愕を含んだ声が微かに聞こえた。誰かがイリーナの元へ駆け込んで来たのだと分かる。
どうやらホログラム自体が話しているわけではないらしく、現在、彼女はVIPルームから中継をしているようだ。
その声を聞いた途端、Aから血の気が引いた。ベルナルドだ。
『あらベルナルド、今忙しいのよ』
『ママ、これは一体何の真似です！？』
「ふふ」と不気味に笑うイリーナの声。
ベルナルドはイリーナと接触している。その事実に居ても立っても居られなくなり、Aは二人の元へ向かおうとした。
「先輩、待って！」
だが、そこを一星から止められた。
「でもベルナルドさんが…！」
「向こうにはフロイが向かっていました。フロイを信じましょう。今は、相手の要求を聞くことからです」
「……そうだね」
言われた通り、イリーナの言葉に耳を傾けた。
彼女は中継を続けた。
『この中継を見ている全世界の首脳たちよ。お前たちが所有する全ての戦略兵器を、私は把握している。「世界平和協定」の条約違反の証拠を公表されたくなければ、提示する金額を、指定の200の口座に振り込んでもらう』
これがイリーナの本当の目的。
お金のためにここまでするのかと、つくしは驚いている。だが真実は違った。
「彼女の真の目的は、堕落した王を失墜させること。堕落した首脳たちをその地位から引きずり下ろすつもりです」
趙金雲は、彼女の真の狙いを悟ったようだ。
お金ではなく、クーデターだと。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2020年4月6日 19時
