493、サッカーはいなくならない ページ49
明日人と廊下を歩いていると、新条さんが通りかかった。駆け寄ってみると、その頰は腫れ上がっていた。
「!?それ…!」
「どうしたんですか、その顔…」
この傷、まさか…とAから血の気が引いた。
「それより、決勝進出おめでとう」
新条は、顔の怪我について何も説明しようとはしなかった。
そして祝福の言葉にもあまり嬉しそうじゃない二人に、新条は何かを察し、口をつぐんだ。
「勝ったのは嬉しいけど、イタリア代表とはもっと真正面から戦いたかった。サッカーはもっと楽しいはずなのに…」
悔しそうに拳を握る明日人。
「こんなことを続けていたら、みんなサッカーが嫌いになっちゃいます。あんなサッカーは、サッカーとは認められない…」
俺が好きだったサッカーはいなくなってしまうんですか?と、泣き出しそうだ。Aはその背中を黙ってさすった。
すると
「いや…サッカーはいなくならない」
新条はそう言った。
明日人はハッと、顔を上げた。
「君がサッカーを信じ、君が必要とする限り、サッカーはそこにある」
「新条さん…?」
新条のその言葉で、明日人の様子が変わった。
背を向けて去ろうとする新条を、明日人は呆然と見つめる。
「…俺の父ちゃんなんですか…?」
「?」
今、明日人何か言った?
「あ…」
そこでAは絆創膏を所持していたことを思い出し、新条を追いかけようとした。
だがその前に、明日人の方へ振り返り、断言した。
「私は、サッカーを嫌いになんてならないよ」
「!」
あんな素敵な人たちに出会わせてくれたサッカーのこと、嫌いになんてなれるわけない。
「それは絶対に、みんな同じ」
それに今日、私たちはちゃんと自分の気持ちに正直でいられた。その点では、悔いはない。
「胸を張れる日は来るよ、あの時自分たちのサッカーをして良かったって。ペトロニオさんたちだってきっと、本当のサッカーができる日は来るって!」
明日人は涙ぐみながら頷いてくれた。
Aはすぐに後を追い、絆創膏を渡した。
「新条さん、良かったらこれ…」
「ああ…すまない。ありがとう」
「……イリーナさんですか?」
その問いに新条は何も答えることはなかったが、誰の仕業かとうに確信できている。
(じゃあ、もしかするとベルナルドさんも…)
そう考えるとゾッとする。
「西村さんと初めて会ったのは、壮行会でだったね」
「え?ああ…そうでしたね」
懐かしいな。その頃は、まだ新条さんを疑ってた時期だっけ。
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アルティメットカオス - はい。数話見たあとすぐにパスワード認証って出てきますね。 (2020年4月3日 8時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - アルティメットカオスさん» 大変申し訳ございません。パスワードは解除しているはずなのですが…まだ出てきますか? (2020年4月3日 6時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
アルティメットカオス - この作品のシリーズ8がよくパスワード認証って出てくるのですが……なぜですか? (2020年3月31日 20時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 黒音_幻月さん» コメントありがとうございます!この作品は夢主の成長も題材としているので、そうおっしゃっていただき、とても嬉しいです!完結に向けて頑張りますので、楽しんでいただけると幸いです。 (2020年3月29日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - いよいよ10ですね!キャラクターとの会話は勿論、夢主さんがキャラと共に成長していく姿が見ていてとてもワクワクします!紅葉さんの作品が大好きです、これからも応援しています! (2020年3月28日 19時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2020年3月21日 1時