それは美しい嘘だった 2

嘘55 ページ5

.









「俺さ、嘘には2種類あると思うんだよね」


「2種類？」


「うん。綺麗な嘘と、醜い嘘。
俺がついてた嘘は醜いのかもしれないけど、あいつが俺についてた嘘はたぶん綺麗だった。あいつが本当は気付いてたって聞いても、何も思わなかったしむしろ話してくれて嬉しかったんだ。

綺麗な嘘って、たぶん許せる嘘なんだと思う」


「許せる嘘……」











確かに、ナムジュンさんがついた嘘はテヒョンのためであって決して自分のためじゃない。そりゃ、少しはあったかもしれないけど。でも、その嘘は弟を守るための必死の嘘だった。

もし、ナムジュンさんがこいつを庇っていたら、2人とも両親から見放されるか、どんなに庇ったってナムジュンさんだけが擁護されて結局はこいつが悪者扱いされていたと思う。


正直に言っていたら、もっと悪い結果だったかもしれない。










「でも、ほんと不思議だよな」


「何が？」


「俺、もう兄弟なんて名乗りたくもないって思ってた。この仕事も辞めるつもりなんてさらさらなかったのに。こんな仕事ではあるけど、ジミナやジョングギと友達になれたし、満足はしてたんだ」


「……そうだな」


「ほんと不思議。でも、分かったこともある。

なあ、ジミナ。人は変われるんだよ。この世界にいようが、普通の世界にいようが、誰だって変われる。それはいつからでも遅くないよ。


だからさ、一回自分に正直になってみなよ」









正直に。そんなことで変われるのか。
そもそも、ナムジュンさんの嘘が綺麗であったように、テヒョンの嘘も本当はナムジュンさんを思っての嘘だったんじゃないか。結局、綺麗な嘘ってのは誰かのための嘘なんだ。

なら、俺はどうなる？あの人に知られたくなくて、嫌われたくなくて必死に自分を嘘で隠して。


何だよ。ただの醜い嘘じゃねえか。









.

嘘56→←嘘54

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す