ごめん。【After Story】 (ページ12)

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お色直しを終えて、今は自由時間。
私たちはそれぞれ挨拶に回らなければならない。

昔の友達に会ったり、取引先の方も参加してくれていたり。私たち二人とも、たくさんの人に愛されてるんだなって。

「Aっ」

重く、低い声。

今でも鮮明に覚えているその声に、自然と体が反応する。

「……テヒョン」

茶色に染められていた髪は、黒になっていて。出会った頃のテヒョンに戻ったみたいだった。

「今日は、招待してくれてありがとう」

「ううん。テヒョンは大切な友達だから」

「っ……」

友達、と言ったのは過去にけじめをつけたかったからじゃない。
私たちは既にそれぞれの道を歩んでいて。そこにはもう、あの頃の私たちはいない。

「今はどう？上手くやってる？」

「……うん。もうすぐ結婚しようかなって思ってる」

「そっか。よかったね」

「……ねえ、A」

「なに？」

「……やっぱり、なんでもない」

きっと、テヒョンはまだ私を忘れられていないんだと思う。だけどそれは、私だって同じ。
私はこの先も、貴方を完全に忘れることはできないと思う。

だけど、それでも。
時には何かを犠牲にしなきゃいけない。
何かを捨てて、そうしてようやく前に進める。

今の貴方は前に進もうとしてるから。
私の最後の役目は、貴方の背中を押してあげること。

「幸せになって。テヒョン。
そして、あの子を愛してあげて。

あの子を愛せるのは、テヒョンだけだよ」

「っ、A ……」

私が貴方を愛したことも、貴方が私を愛したことも間違っていたわけじゃない。
だけど、私たちは別の人を愛した。
それはきっと、こうなる運命だったの。

だから、これはお別れじゃないよ。
私たちの新しいスタートなの。

「……俺、幸せになるよ」

「うん。貴方が幸せなら、私も嬉しい」

久しぶりに見たテヒョンの笑顔は、どこか吹っ切れたような爽やかな笑みで。

私の大好きな笑顔だった。

　
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