【Free! シリーズ】短編集 (ページ6)

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賭けから始まる告白（桐嶋夏也）２ページ6

千歳「それで、当てることができなかったらどんな条件なんですか？」

ため息混じりに夏也に訊ねる
すると、夏也はニッと笑い千歳をまっすぐ見た

夏也「俺と付き合ってくれ」
千歳「あー、禁酒に付き合うんです…ね………へ？」

夏也の言葉に千歳は固まる
突然の彼の告白に驚いたのだ

千歳「付き合うって…どこに？」
夏也「どこにじゃない。彼女になってくれってことだ」
千歳「……冗談ですよね？」
夏也「冗談じゃない。本気だ」

真剣な顔で彼女に告げる
夏也のまっすぐな眼差しに千歳は目を奪われる
彼女は混乱した自分を落ち着かせようと深呼吸をした

千歳「分かりました」
夏也「よし、やるぞ」

夏也はコインを上に投げ、両手で受け取る
そして、どちらかの手にコインを握り千歳の前に差し出す

夏也「さあ、選べ」

彼に差し出された両拳を千歳はじっと見つめる

千歳「…左で」
夏也「左でいいんだな？」
千歳「…はい」

夏也は彼女が指した左拳を開く
二人の間に緊張感が走る
左手を開くと、そこにはコインが入っていた

夏也「お前の勝ちだな、千歳」
千歳「は、はあ…」

夏也は笑顔で言うが、千歳はポカンとした表情だった

夏也「よかったな！さあ、俺の禁酒令も含めてお前の言うこと何でも聞いてやる！」
千歳「…何でもいいんですか？」
夏也「ああ！」

彼は明るく訊ねた

千歳「夏也先輩」
夏也「何だ？」

すると、千歳は真っ直ぐ夏也の目を見ながら彼の左手を握る

千歳「私と付き合って下さい」
夏也「……は？」

夏也はポカンとする
その表情を見て、千歳は笑みを浮かべた

千歳「でも聞いてくれるんですよね？さっきの告白、とても嬉しかったです！」
夏也「……千歳！」

夏也は千歳を強く抱きしめた

夏也「千歳…好きだ」
千歳「私もです、夏也さん」

千歳は抱きしめ返す
誰もいない店の中、二人はお互いの温もりを感じ合ったのだった

※

数週間後、夜の東京の居酒屋にて

夏也「と、千歳に自分の気持ちを言えることができたってわけだ」
尚「そっか、よかったね夏也。…で、その二週間禁酒は実行したの？」
夏也「え？」
尚「二週間、禁酒は実行したのかな？」
夏也「…やってない、です…」