君以外もう知らなくていい 1

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「あれは……」
「もしかして恋人からのプレゼント？」


サラッと答えたらよかったが藤ヶ谷の同僚という手前、何となく答えにくくて口籠ってしまった。


「……うん、まあ」


ふーん、なんてよく分からない返事をしたあと、こっちーと店内を歩き回る。そして時々俺の体にあてながら、どんどん服を積んでいった。

いつもこんな調子なのか店員が時々、声をかけ選んだ服を受け取っている。


すげーという感想しかなく、ただただ付いて回っていると玉森さんがアクセサリーコーナーで足を止めた。


そして、しばらく悩んでから華奢なチェーンネックレスを手に取る。


「これ使いやすそう。ちょっと襟ぐり開けた時に覗く長さ」


鏡を見ながら呟き、同じものを取って俺の首に付けた。


「あれ？ あ、そっか」


玉森さんが付けるとカットソーの上から見える位置にあったが、俺だともっと下の位置になる。


「さっき服選んでる時も思ったんだけど、背が低いとバランスが難しいね。裾切ってもらうとデザイン変わっちゃうし」


ささっと選んでるように見えたが、あれで難しいと思っていたのかとそっちの方が衝撃だ。


「マネキンと同じ服買ってもサイズが違うと見え方全然違うし、そもそもSサイズの展開が少ないブランドも多いからね。通販では専門店もあるみたいだけど、実際着てみないと合うかどうか分かんないし」


Sサイズ専門店について調べてみたことはあるが、店舗があっても試着のみの予約制だったりするから結局行かずじまい。


仕事はシャツやジャケットスタイルで、シンプルなデザインの自社製品で着回すから大きな失敗をすることはない。

自社製品はサイズ展開が豊富だからプライベートでも着ればいいのだろうが、休みの日も仕事がチラつく感じがして気が進まない。


「このネックレス、サイズ調整してもらう」
「え、そんなの出来んの？」
「うん、そういうのやってくれるところあるから」


サイズの調整が出来るなんて知らなかったし、知っていても俺だったらそこまでしない。

サイズが合ってないアクセサリーを、サイズ調整してまで使うという熱量がないし、思い付きもしないだろう。

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