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俺があっさりしすぎた母ちゃんの物言いを、わざと慇懃に伝えると、
「は〜、助かった。本当いうとさ、誠があそこで『残る』って言ったとき、あんまり有難くってすがり付いてチューしそうだった」
子供のように破願して、大袈裟に嬉しさを表現するこの男前に、なぜかこの時、心臓はもう一度拍子を飛ばした。
・
旭の左手の小指は今、薬指と固定器具とでグルグル巻きにしてある。
・
初めての宿の仕事があらかた片付いた後、あんちゃんに連れられて、俺も一緒に診療所についていった。
あんちゃんそのまま副業の漁に出て行った。
この辺の男連中は、大半が何らかの海の仕事をしているらしい。
白い扉を開けると、もう中はぎっちりと年寄り連中が占拠していて、どこが悪いのか元気いっぱいの大きな声で、それぞれに隣とくっちゃべっている。
「…なんで、みんな大声張り上げてんのかな…？」
「みんな補聴器で、それでも大きな声じゃないと、相手の言ってることわかんないんだよ」
旭はそう言いながら受付の顔見知りらしいおばちゃんに診察券を差し出した。
そういえば、皆一様によく見れば目立たないようにはしてはいるが、何か耳にはまっている。
「…なんかここにいる人が、全員宇宙人に見えてきた」
日本語の通訳気を耳に片田舎に密集して生きている宇宙人たち。
ＭＩＢみたいだ。
「何いってんだよ、近所のジジババの憩いの場なだけじゃねーか」
旭は『フン』と馬鹿にしたように笑った。
診療室の待合のベンチにきつきつに並んで座りながら、ふいに、
「学校のこととかいいのか？」
そう旭は聞いた。
「…大丈夫かどうかわかんないけど、確か作品の提出期限が9月末だったから死ぬ気でやればどうにかなるんじゃないかな？」
「作品？」
「俺、美大なの。本当いうと、色々あるけど。どっちか取れって言われればそりゃこっち優先だから」
親の了解を取れば後は何を言われても、こっちのものだ。
「…指、大丈夫かな？」
「…大丈夫じゃ、ねーだろうけど。まあ、それなりにはなるだろ？」
そんなこんなの話をしているうちに、名前を呼ばれた。
一旦、中に入った旭を見送っていると、周りの視線が俺を包んでいることに気が付いた。
新参者の俺に対する好奇いっぱいの視線に、居心地の悪さにたまらず体を小さくさせる。
すると、入ったはずの旭が顔を覗かせて、
「誠ちょっと来て手伝えってさ！」
俺はホッとしながら、診察室へ駆け込んだ。
ラッキーアイテム
革ベルト
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wakano(プロフ) - むぎさん» むぎさん！いらしてくださってありがとうございます！やっとペースが出来てきた感じですね。エンジン掛かるのが遅いので。今回の話は、そんなに怖くはないと思いますよ〜（笑）可愛い二人を見に来てくださいね！ (2012年7月25日 20時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - お邪魔します♪少しずつ近付いてく距離感にドキドキして楽しんでます☆大きめシャツの誠くんの姿に思わず「可愛いっ！」と声を大にして同意です(≧∇≦) (2012年7月25日 8時) (携帯から) (レス) id: 3852c5ec20 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» やっと、緊張の糸が切れたって言うか、ホッとしたんだと思います。同室になって寝食を共にするようになって、まだまだもうちょっと色々ありますが、お互いのことを分かり合ってくれたらいいなと思います。千切りは大きな目標です！ (2012年7月21日 21時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 羽月さん» 羽月さま初めまして！こんな隅っこまでお目を通していただきありがとうございます！うちの誠を可愛いといっていただき嬉しいかぎりでございますです。二人の関係がなかなか進まないが私の話で、皆さんをヤキモキさせますが、もう暫くお待ち下さいね！ (2012年7月21日 21時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
＊華＊(プロフ) - 人に怪我させてしまったって心を重くした誠くんの優しい心がじんわりと涙を誘います。旭が無言ずっと傍にいてくれて良かったです。旭も優しいですね。千切り頑張れ〜っ。 (2012年7月21日 10時) (携帯から) (レス) id: 27604c18e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年6月18日 23時
