エピローグ４ ページ13
自慢げににっこりと笑う章さんと、ちょっとしかめっ面をする淳の顔を交互に見る。
箸を割りながら、章くんがご機嫌に話し始める。
「…聡くんはさ…、淳がバイオやってたの知ってるよね？じゃあ、この人がさ、製薬するときに結構重要な絡みのある複合酵素を発見して、今回特許申請したの知ってる？」
「…なんか聞いた様な気がするけど…」
「でも、あれはすぐにすぐ役に立つ物なんかじゃないし、これからまだ研究の必要があるって…」
「だから、それをうちでやってくれりゃいいんだよ。ちゃんとした形になれば、我が社はぼろ儲けだし。淳にはその分だけ特許料が入ってくるだろ？それに加えて、入社の条件に株式の３％を淳に譲る事にする」
章くんは突き出しを一口口に含むと『うめ！』といって俺を見て、笑う。
「…祖父さんの残した物を、一緒に守って欲しい。俺は経営側から。淳は技術の面から。二本柱でね。これって、最高じゃね？」
「…こうやってさ、まんまと陥れられたんだよ…。章さんに」
苦笑いを浮かべる淳もまた、章くんを名前で呼んだ。
「…じゃあさ。淳はこの会社にはいるんだね？」
「残念ながら、部署は研究所に入ってもらうことになるけどね」
「どう？」
「どうって…言葉がでないよ…」
今朝は寝起きからただでさえ、二日酔いで頭が痛くて、回転が決して速いほうではない俺の頭はいつも以上にゆっくりとした動きしかしていないのに。
情報がめまぐるしすぎて、とてもじゃないがオーバーワークだ。
ついて行けずに、過剰な負荷が掛かって煙が上がりそう。
「もう…。淳が帰ってきたことだけでも、一杯一杯なのに…」
そう言うと、向かいの章くんが静かに笑った。
「…よかったな。これでもう離れたり出来ないから…。あの時の埋め合わせにはまだ足りないかもしれないけど…」
手元にある水を一口飲む。
「俺、久しぶりに賢い選択をした自信があるよ」
章くんは本当に嬉しそうに、瞳を輝かせた。
それは希望に満ちた、若き経営者の顔だった。
二年の間に成長し作り上げた顔だった。
引き戸が開けられ、食事が運ばれだした。
「さあ、食おうぜ！…と、忘れるとこだった。これ、淳に。社内では渡せなかったから」
封をされたＡ４サイズの封筒が淳に手渡される。
「後から、見て」
そう言いながら、章くんは汁椀のふたを開け、湯気をゆっくりと吸い込んだ。
ラッキーアイテム
革ベルト
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wakano(プロフ) - はじめまして、あすかさん！一年以上昔のしかも、長編といえるお話を書ききったのはこれが初めて、というしろもんですが、読んでいただけて、大変嬉しいです。これは、シリーズ化して、中篇くらいのお話がぼちぼちとあります。まだ、続く予定です！ (2013年10月11日 23時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 始めまして。熱で一日中倒れていたのですが、このお話に出会って一日かけて全部読んでしまいました。とても素敵なお話で、OさんとMさん、そしてSさんの心理の描かれ方がとても素晴らしいと思いました。何度か涙しながら読ませて頂きました。感動しました！！(*^o^*) (2013年10月10日 2時) (レス) id: 25cb458627 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 本当に完結ですよ〜！自分でも初めての長編完結で、なんとも言えない気持ちです。いつも応援してくださって、ありがとうございました！新し物をどうするか考え中ですが、また宜しくお願いします！ (2012年4月2日 6時) (レス) id: f6be20403f (このIDを非表示/違反報告)
あきの - wakanoさん、とうとう完結しましたね〜！おめでとうございます、そしてありがとうございます！本当に素敵なお話でした、幸せな時間をいただきました。淋しいけど、これからもこの２人に光が降り注いでいくのが分かるエンディングで嬉しくなりました。お疲れ様でした！ (2012年4月2日 1時) (携帯から) (レス) id: e942779ebe (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» 華さんのコメントにどれだけ励まされたか！どうにかこうにか書き上げることが出来て、ほっとしています。本当にありがとうございました！ラストのシーンは最初から決めていたので、お話し自体も、被らせる様に今日頑張ってしまいました！ (2012年4月2日 0時) (レス) id: f6be20403f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年3月21日 23時
