手を繋ごう (ページ2)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:13,915 hit

② ページ2

「月…今日のはほとんど見えないくらい細っせーな…」

「十五夜って九月じゃなかったっけ」

「ちょっと待って…」

ｼﾞｭﾝが携帯を取り出し、なにやら検索をする。

「今年の十五夜は9月２７日でした」

もう一度ぐんと振りぬいて。

「残念…！なーんて、月は口実」

と言いながら、夜空を見上げる。

「…こうやって二人で歩きたかった」

「……」

今回の舞台は地方で、土地柄的な難点は、幾つも最初から上げられていた。

それを呑み込んでも、『よかった』と言って貰える、舞台を用意するプレッシャー。

俺といることで、それは、少しは軽くなっていくのだろうか？

一端を担う一人として。

共に生きる者として。

握っている指を、強弱とリズムをつけて、にぎにぎ。

「あ…なんかそれ、ツボに入って気持ちいい…」

「マジ？」

「ほら…」

俺がやったのより、確実に強く、ｼﾞｭﾝは握り返してくる。

「いててててて…いてーって」

「はは…ｻﾄｼが最初にやったんだろ？」

嬉しそうに笑う、ｼﾞｭﾝを見てほっとする。

「去年の時、すげー泣いてたね」

「今年は泣く？」

「わかんねーよ。そんなの。出そうとして出してるんじゃないんだから。湧いて来るんだから」

「まあね」

「一度は、オールデイ晴れって言うのやりたいね」

「俺らじゃないみたいだけど」

話しながら、ワクワクとしながら、ドキドキと胸を鳴らす。

未来を語る。

その言葉と共に。

・

今夜の月は、満月。

まん丸に満ちた黄金の色は、少しだけ陰り、俺を見下ろす。

あの夜、隣にいた人は、今はここにいない。

俺は、一人ｼﾞｭﾝが帰って来るのを待っている。

大きな波がやってきて、あっという間に俺たちを呑み込んだ。

色々な人の想いが、俺たちを渦の中でかき回した。

抗い、呑み込み、傷付いて、それでも、笑う。

だって、そのために、俺たちはここにいるから。

俺は、ここにいなくてはならないから。

いつまでも、５人でいる。

ずっと手を繋いでいる。

簡単に叶いそうな、この望みは。

俺にとって、心底、願って止まないものだ。

「……今回は、晴れたねオールデイ」

手を繋いで歩いた夜を思い出す。

「そうだね。願いは…叶うよ」

負けなければ。

共に行く道を諦めたりしない。

輝く月を眺めながら、そう呟いた。

　＝おしまい＝