第8話 ページ10
主人公side
「そんなことはないと思う」
俺のその言葉にあの子は顔を上げる、くりくりした目に涙を貯め、雫が桃色の頬を伝って落ちていく。
そんな姿もかわいいと思うと同時に焦りが止まらない。さっき言った言葉の続きが見つからないのだ。
ぶっちゃけ言ってしまえば、俺はやられたらやり返す。10倍返しくらいしてしまうタイプだ。碌なアドバイスなんて出来やしねぇし、況してや俺みたいなタイプの野郎が励ました所できっとあの子の求める言葉じゃない。
缶を持つ手に力が入る、かける言葉が見つからず、しんとした空気。その空気に耐え切れずあの子から視線を足元に移した時だった。
「ありがとうございます」
何も言えない俺にあの子はお礼を言った。
思わず視線をあの子に戻した。涙はこぼれているが、ふにゃりと笑う姿が余計に痛々しく見え、何も言えなかったのが悔しくて。
俺は思わず______
「俺がお前を守ってやる!」
口走ってしまった。
痛々しく笑うあの子を見て、思った言葉をぶつけてしまった。出してしまった言葉はもう元には戻せない。腹を括った俺は続けて言った。
「俺は青学の高等部で校舎は違うし、出来ねぇ事が多い。況してや今日会ったばかりで自己紹介すらまだだし、君にとっては全く信用出来ねぇ野郎だと思う。だけど、どうにか君の力になってやりたい」
その、今はやってねぇが、元々テニスだってやってたし君に教えられるぐらいには出来るはずだ、勉強も中等部のやつだったらギリギリ教えられる、といった余計なことまで口走った。
驚きでなのか、目を見開くあの子は涙が止まったようにも思える。
咳払いをひとつ、仕切り直して俺は自分の名前を口にした。
「俺の名前は東 A。
もし俺を……俺のことを頼ってくれるなら君の名前を教えてくれないか?」
まだ涙がたまっている目をきょとんとさせていたあの子は小さく唇を動かした。
そして、ふにゃりと弱々しく笑いながら、俺の顔を見上げながら「竜崎 桜乃です」と。
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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時