第45話 ページ47
桜乃side
「試合は3セットマッチ、如月副部長からのサーブで始めます」
審判役の部員の声。
目の前では如月副部長がボールを取り出し、何回かバウンドさせている。
コート外のフェンスでは、男子テニス部の試合かのように沢山の人が私と如月副部長の試合を見守っていた。
私はラケットを構え、この試合は絶対に勝つと、深呼吸をしながら如月副部長からのサーブを待っていた。
実力差が、とかそんなの関係なく。
いつも何かされると泣いているだけだった私は、初めてやり返したいって思ってしまった。
こんな感情、東さんに知られちゃったら嫌われちゃうかな?
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「テニスの才能がないあんたが、勝ち上がるなんて信じられない。相手はきっと体調が悪かったのよ」
試合前のサーブ兼を決める際に、如月副部長は私にそう言った。
目は笑っていない。田中先輩みたいに不敵に笑うなんて事はなく、ただただ、私を睨んでいた。
「越前くんにでも教えてもらったのかしら?」
「え……?
どうしてリョーマくんの名前を出すんですか?」
「知ってるのよ。
壁打ちで越前くんに良くアドバイスもらってたこと。
なんであんたみたいな才能のカケラもない子に教えているのか意味不明だけれど、竜崎先生にでも頼まれてたのかしらね」
淡々という如月副部長の声音は低い。
その声音からかラケットが回転する音が遠く感じる。
「ほんとむかつく。
私の大好きな越前くんに構われてるあんたが。テニスも出来ないのに女テニにいるあんたが」
カランカランッ______ 。
如月副部長の方へ倒れたラケット。
その音に被せて如月副部長が発した言葉が、私の耳に届く。
「ラケット壊しても辞めないし、我妻みたいにお堅い子はサボる子が嫌いだから練習無くなったって嘘の連絡させて退部させようとしたのに、我妻ったら余計なことしてくれちゃって。
山田とシオリに勝ったみたいだし、我妻の言ってた条件クリアしちゃってるから、あんたを退部させるにはテニスができなくなるしかない。
だから、今日、壊れてもらうから」
カリッ_____ 。
親指の爪を噛みながらそう言った如月副部長の言葉が耳から離れなかった。
ベースラインまで下がって行く如月副部長を呆然と見つめた。
ラケットを拾い、涙が溢れる目を腕で拭う。
私もベースラインまで下がり、審判役の声を待った。
「試合は3セットマッチ。如月副部長からのサーブで始めます」

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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時