第35話 ページ37
主人公side
「ありがとうございました!」
あの後は、桜乃ちゃんはポイントを取れず。
まぁ、意地悪し過ぎたかもしれねぇけど、それでも惜しいことばかり。
「これから、毎日最低1ゲームはする。
そこで、試合慣れと俺のやり方を覚えろ」
「東さんの、やり方、ですか?」
「残り3週間で、ゲームメイクが出来るほどまでの成長は出来ねぇ。なら、俺ならどう返すかどう攻めるかってのを覚えた方が、勝てる確率が少しでも上がると思う」
多分、桜乃ちゃん自身が考えてテニスをするってなると経験の差が出てくる。どう対処するかってのがきっと大変になって、相手に決め球を作らせてしまう。
俺はタオルを口元に寄せながら、どうしたらあと3週間で彼女が勝てるくらいに成長できるか考える。
青学の女子テニス部の実力はよく分からんが、俺の基準じゃ桜乃ちゃんはまだまだだしなぁ。
考えた所でどうにもならない、タオルをラケットと一緒にバッグに押し込んだ。
「そろそろ帰るか。忘れ物ねぇ?」
「はい!」
バッグを背負い、テニスコートを後にする。
道中は今日の振り返りで会話が弾む。ここが駄目だったという指摘から、良かったところを褒めたり。
毎日桜乃ちゃんを家の近くまで送っているわけだが、思ったよりテニスコートに長居していたみたいで、いつもの別れる場所に着いた頃にはあたりが薄暗くなっていた。
「今日もありがとうございました!」
「今日は家まで送る。あたり薄暗ぇし。」
低い位置にある頭を撫でれば、桜乃ちゃんは頬を染めながらふにゃりと笑った。
可愛い反応に胸がギュッと掴まれるような感覚で、この子が早く俺のこと好きになんねぇかなって、手を出してしまいそうな感情を押し込め理性と戦う。
「また明日、よろしくお願いします」
「ああ、ゆっくり休めよ」
桜乃ちゃんの家の前に着き、また明日な、そう言おうとした時だった。
「おや、桜乃ちゃんも今帰りかい?」
中学の3年間、嫌というくらい聞いたことのある声が後ろから聞こえた。
ギギギっと擬音が出るんじゃないかってぐらいゆっくりと振り返れば最近桜乃ちゃんにチラついていたババァの姿が。
「あ!おばあちゃん!おかえりなさい!」
ひょっこりと俺の前から顔を出し、あのババァのことを『おばあちゃん』と呼んだ桜乃ちゃん。
おいおいおい、まじかよ。
引きつる俺の口角と、ニヤつくババァの顔。
「久しぶりじゃないか、東」

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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時