第34話 ページ36
主人公side
「今日は俺と試合だ」
「ふぇ!?」
1ヶ月間というめちゃくちゃ短い期間で桜乃ちゃんを鍛え上げるには試合回数を重ねるのも大切だ。
「試合運び次第で勝てない試合にも勝てたりする。
まぁ、ハンデとして俺は本気でやらねぇしサービスやるから桜乃ちゃんは本気でやれ」
ボールを投げれば、慌ててキャッチする彼女。
すでにコートで待つ俺を見ておろおろとコートに入った桜乃ちゃんは数回深呼吸を繰り返し、上にボールを投げた。
「いきます!」
パコンッ________。
綺麗な音をたてて俺の方へまっすぐ飛んでくるサーブは、バウンドをして右側へ跳ねる。
前ならポコッと弱々しい音を立てて飛んで来たヘロヘロサーブが、今じゃキレのいいキックサーブを打てる様に成長していた。俺の教えがいいのか、はたまた桜乃ちゃんの努力の成果か。
「前よりキレが良くなってんじゃねぇか!」
「ありがとうございます!」
途切れないラリーにそろそろ区切り入れるか。
桜乃ちゃんが取れないであろうネットギリギリにうち返し、そこで一旦区切りが入る筈だった。
桜乃ちゃんが返球出来ず、俺に点数が入って、また彼女からのサーブでゲームが再開する予定で_____。
「届いて!」
そこからは、スローで見えたんだ。
長い三つ編みを揺らしながら走る彼女は、グリップを持てるギリギリで握り、腕を伸ばしラケットにボールを当てた。
「まじか」
ポコンッと跳ね返ったボールは俺のコートへと入る。
バウンドをせずにコロコロ転がるボールに桜乃ちゃんも俺も目を見開いて固まってしまう。
取れねぇだろうなと思って返した意地悪ボールを取った桜乃ちゃんに、俺は違う意味で胸が熱くなった。
まさか、咄嗟にラケットを持てるギリギリまで後ろで持って距離を補うなんて。
「入っちゃいました。
東さんからポイント取れちゃいました……っ!」
楽しそうに笑う桜乃ちゃん。
彼女は、才能が無いわけじゃない。
俺のコートに落ちたボールはまぐれなんかじゃない、俺が油断してたってのもあるだろうけど、俺が教えた通りにフォームを崩すことなくボレーを決めるあたり桜乃ちゃんは______。
「今まで、練習の環境とコーチに恵まれなかっただけか……」
きっと、この子は才能がある。
「東さん、何か言いました?」
「いや、何にも。
……続けようぜ、サーブ打ってこい!」
俺が投げたボールを受け取り彼女は楽しそうに笑った。
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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時