第32話 ページ34
朋香side
放課後、部活へ向かわずに私と一緒に帰る桜乃から来月の女子テニス部内校内トーナメント戦まで部活に出られなくなったと聞いた。
しかも、いい成績を出さないと強制退部みたいで。
どうしてそんな状況になったのか分からず、それよりも桜乃がさらっとそれを言ってしまうものだから余計に混乱した。
「なんで、そんなこと笑って言えるの?」
「こう言っちゃうと変かもしれないけど、あんまりショックじゃ無かったんだ」
ふにゃりと笑いながら、ショックじゃなかったと言った桜乃は無理を言っている様子はない。
本当にショックじゃなかったみたいで、逆に桜乃から昨日あった事を聞いて私がショックを受けた。
「東さんが、教えてくれるから。私が下手でも呆れずに付き合ってくれてて。私ね、東さんとしてるテニスのが楽しいって思うようになったの」
「え……?」
驚きと同時にやっぱり、と思った。
あの人は桜乃の心を守れるんだって。今までの桜乃だったら、部活に出られない、校内トーナメント戦でいい成績を残せなかったら強制退部って言われた時点で心を壊して、こんな風に笑えていない筈だもの。
「それにね、東さんすっごくテニスが上手なんだよ!教え方も上手だから私ね、少しだけだけどテニス上達したんだ!」
嬉しそうに話す桜乃は、まるで出会った頃のリョーマ様の事を話しているように見えた。
桜乃をテニスに引き込んだリョーマ様に対する感情が、あの人に置き換わったのかもしれない。
まぁ、そりゃそうよね。
あっっっっっっんなにイケメンで、年上の余裕があって、テニスが上手?で、優しくて(桜乃限定)、他にも色々あるんだろうけど。
今の桜乃の状況から考えてあの人に靡かない要素が見当たらない。
「桜乃が楽しいなら、私はそれでいいや!」
今日もこれから東さんとテニスをするんだ、そう言って楽しそうに笑う桜乃。
このまま何事もなく、平穏な日々が続いてくれたらどんなに良いか。何が起こるか分からない明日に私が不安になっても、桜乃に声をかけるしか出来ない私はとてももどかしい。
分かれ道で、桜乃にまた明日って。
私はその場に立ち止まって桜乃の後ろ姿を見つめる。
あの子の後ろ姿は、前までの居なくなってしまいそうな雰囲気はなく、なんだか少しだけ大きく見えた。
全部、あの人のおかげだね。

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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時