第30話 ページ32
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「3日間、部活を無断で休んだと聞いたの」
我妻の冷たい声がテニスコートに響いた。
周りは見ないフリ知らないフリ。
私は我妻の隣に立ち、目の前で涙目のあの子を見下ろす。ラケット壊してあげたのに、前のラケットよりも良いラケット持ってるのも憎らしい。
「部内の連絡網で、部活がなしになったって聞いて……」
涙がこぼれ落ちそうになりながらも我妻から目を逸らさず、震える声で言うあの子。
我妻は額に手を添え溜め息を吐く。
「それで、三連休は何を?」
「知り合いにテニスの練習を付き合ってもらっていました」
口角が上がりそうになった。
壁打ちもまともに出来ない運動音痴と誰が練習を!
越前くんのように練習に付き合うような人なんているわけないじゃない!
だって、そうだから我妻はテニスコートにあの子を入れずに壁打ちばっかさせてるんだから。
早く、退部を言い渡さないかな?
私にそんな決定権はない、だから部長である我妻が退部を言い渡すような状況に追い込んだんだから。
部長である彼女は、責任感の塊だからこそ部活を無断で休むような子なんて許せないと思うんだよね。
早く何か言わないか、隣にたつ我妻を見れば何か考え込んでいるかのように何も発さない。
「部活をバックれるような子よ?私たち女テニにはそんな子要らないと思うけど?」
痺れを切らし、優しく我妻に進言すれば、目の前のあの子は肩を震わせた。
一方の我妻は手を顎に添え、微笑んだ。
きっと、退部を言い渡す。
さぁ、早く、早く退部って言ってあげて!
「来月の校内トーナメント戦まで部活の出席を禁止するわ。そして、トーナメント戦でいい成績を残せなかったら悪いけど部活を去ってもらうから」
「「え……」」
私とあの子の声が揃った。
我妻は微笑みながら言葉を続ける。
「これなら、誰も文句ないでしょう?」
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「なんですぐに退部にしなかったの?」
納得いかず、あの子がテニスコートを出て行ってから私は我妻に声をかけた。
「だって、あの場で退部なんて言い渡したら竜崎先生が乗り込んでくると思ったから。
それに如月さ、竜崎さんを退部にするならあれだけの理由じゃ出来ないよ。
トーナメント戦、竜崎さんは如月のいるブロックに入れる予定だから」
荒れるかもね、と笑う我妻。
私でもあの子でも、梅子でも、誰の味方でもない我妻の考えていることが私には分からなかった。
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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時