第20話 ページ22
桜乃side
「俺のお古でもよけりゃ、使ってくれ」
白いラケットから東さんに視線を向ければ、そこには優しく笑う姿があった。
どうしてこの人はこんなにも優しいんだろう?
ドキドキといつもよりも速くうるさい心臓はラケットを貰えたから?
それとも______。
「私みたいな、ちゃんとテニスも出来ない子がこんな良いラケットを貰っても、また……」
思わず、俯き下唇を噛んでしまう。
壊された理由もよくわからないのに、このラケットまで壊れてしまったらきっと、私は立ち直れない。
「初心者ほど、良いラケットを使ってた方がいい。
テニスが好きならどんどん使えよ」
そう優しい声が降ってくるのと同時に、東さんの大きな手が私の頭を優しく撫でた。
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「着いたぜ」
ヘルメットを脱がされ、頭を撫でられる。
暗くならないうちにと、東さんにバイクで家の近くまで送ってもらった。
東さんはバイクに腰かけたまま、私を見つめ、何か言いかけて、髪をぐしゃぐしゃと掻く。
「あの東さ_______ 」
「今度、テニス_____ 」
私の声と、東さんの声が被る。
思わず目を見開く。それは東さんも一緒で思わずふたりで笑う。王子様のようにカッコいい東さんのあの顔は男の人に言うものではないけれど、可愛かった。
咳払いをした東さんは頰を掻きながら、はにかみながら言う。
「今度、テニスしに行こーぜ」
「も、もちろんです!
私、本当にへたっぴだから呆れちゃうかもしれないですけど、それでもよければ!」
「呆れねぇよ。下手くそなら出来るように教えてやるから」
ぐりぐりと、さっきよりも頭を強く撫でられ視界が下がったけど、見間違いでなければ東さんの耳が少し赤かった気がした。
「んじゃ、またな」
そう言ってバイクを走らせ、来た道を東さんは帰って行った。
すぐに小さくなって行く背中を見つめ、ドキドキといつもより早い鼓動に、少し火照った頬に、テニスをしている時やリョーマくんと話している時の様な感覚が私を占めはじめている。
「か、勘違いしちゃダメだ」
考えを吹き飛ばす様に首を大きく横に振り、私は振り返らず家まで走った。
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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時