第15話 ページ17
主人公side
急いで帰って来て損した。
『きゃーっ!
もうっ、すぐ帰って来て!時間がないの!助けてA!!』
なんて言われてぶち切られた電話に何事かと思って急いで帰ってきた俺。桜乃ちゃんとの時間よりも優先させ、危うく事故りそうになりながら帰って来たというのに。
俺の目の前に広がるのは楽しそうに叫びながらリビングでファッションショーを開催している乙女の姿。
「あ!もう遅いわよ!
どっちのワンピースがいい??というよりも、どっちの方が好きだと思う??」
色が違う形の似たワンピースを両手に持ち交互に合わせる乙女。
言葉が出るよりも先に手が出た。俺は思い切り足を踏み込み、怒りに任せたラリアットをかましていた。
「俺の!桜乃ちゃんとの!時間を!返せっ!!」
くだらない事で呼び戻された俺は、半泣きでそう叫んでいた。
桜乃side
「だから、膝伸び過ぎだって」
「う、うん!」
今日も今日で壁打ちをしている所に、ポンタ片手にリョーマくんがやって来てくれた。
休憩中にも関わらず私にテニスを教えてくれるなんて相変わらず優しいなぁ、なんて思いながら思わず頬が緩んだ。
「ほら、へっぴり腰」
いきなりラケットで腰をつつかれ、やっぱり意地悪だ、なんて思う。
でも、私がへっぴり腰なのは確かだもん、そう思うとやっぱり凹んでしまうけれど。
この時間が楽しいなんて思っちゃうのは少しおかしいかな?
男子テニス部の休憩中、リョーマくんはポンタを飲みながらだけど、こうしてテニス関連だけどたわいもない会話が出来てるこんな時間がずっと続けばいいのにと、有り得ないことを思ってしまった。
あんなことになってしまったのは、きっと、私がこんな風に思っちゃったからなのかな?
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???side
「ほんっと、ムカつく」
偶々、見つけてしまった場面を私は少し遠くから見ていた。
どうしてあんな子が、という気持ちが大きく渦巻く。どうしてあの子が、あんなに才能のない素人同然の子が越前くんにテニスの指導してもらえるの?そんな疑問と苛つきが私の中を占めていた。
カリッ______。
「もっと、もっと傷つけば……。あーぁ……」
無意識のうちにまたやってしまったみたい。
歯形でボロボロになった親指の爪を見て、誰かに見つかる前にまたヤスリをかけなきゃだな、と溜め息をひとつ。私は早々にその場から移動を始めた。

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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時