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急に手を引いて連れてこられたのは、高台にある見晴らしのいい公園だった。
『わぁ、こんな場所あったんだ！』
荒船「キレイだろ？おれのお気に入りの秘密基地なんだ！」
『基地？でも建物みたいなのないけど…。』
荒船「いいんだよ！細かいことは！」
私がぶつけた質問に、恥ずかしそうに頬を染めて強がる彼を見て、さっきまでの恐怖はどこへ行ったのやら。
キラキラと顔を輝かせながら、小さなことを楽しそうに話す彼との時間が、とにかく楽しかった。
私たちは陽が落ちる直前までずっと喋っていた。
『そろそろ帰らないと、おばあちゃんたち心配しちゃう。』
荒船「また！また会える？」
『じゃあ、次おばあちゃんの家に来た時は、ここの公園でてつじくん待ってる！』
荒船「それじゃあ、おれが毎日ここに通わないといけないじゃん！」
なんて言いながら、2人で笑い合ったのが幼少期最後の荒船との思い出だ。
加賀美「……つまり、荒船くんはAの初恋の相手だと…。」
『これが初恋に入るのかは分からないけど、まぁそうなのかもね。』
加賀美「それで？そこから再会したの？」
『まぁ私も色々あったから、次に会ったのはボーダーだけどね。
驚いたけど、荒船も三門市出身なら、まぁ不思議じゃないわ。』
加賀美「ふぅん、それじゃあ感動の再会だったわけだ。」
『そんな話してないし、荒船は覚えてないよ。』
加賀美「え〜、荒船くん、そういうの忘れるタイプとは思えないけどなぁ。私が聞いてあげようか。」
『いらないいらない。まじで覚えられてなかったら凹むじゃん。
子供特有の、淡い思い出でいいんだよ、これは。でも、覚えてたら初恋継続かもね。』
加賀美「ふふっ、なにそれ。
いいわねぇ、初恋かぁ。」
『じょーだん。
そういう倫はどうなのよ。私だけ喋るのは割に合わないでしょ。』
加賀美「私は、近所のお兄さんだったなぁ。優しくてかっこよくて。
私が小学生の時に高校生だったんだけど、すごく大人に見えて。」
『あ〜、それは好きになっちゃうわ。』
──────────
穂刈「…らしいが、どうなんだ？実際のところ。」
荒船「あ？覚えてるに決まってんだろ。実際あれからしばらくは公園通い続けたしな。」
穂刈「ふっ、赤いぞ。顔が。」
荒船「…うるせぇ。」
荒船隊の隊室でこんなことを話していたら当然聞かれる可能性があることを、志之は忘れていた。
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作者名：通りすがりのいぬ | 作成日時：2022年7月29日 19時
