独り占めマイヒーロー ページ9
学校帰り、本部へ向かおうといつもの道を歩いていた。
隣には珍しく誰もいなくて、好きな音楽を聴きながら歩くこの道は結構好きだ。
今日はランク戦ないし、夜の防衛任務まで何しよう…。
出水と米屋はランク戦だって言ってたし他の人たちの予定は知らない。
少し眠いし隊室で仮眠でも取ろうか。
ぼーっとしながら歩いていると、不意に声をかけられた。
「すみません、ここの店への行き方を知りたいんですけど…。」
見るからに優しそうな、か弱そうな男性だ。
彼が指差す店はここらで有名なカフェで、女子高生がこぞって放課後に集まると噂されている。
『あぁ、そのお店なら、そこの通りを右に曲がって、2つ目の信号を左に行けばありますよ。』
「右…？左……？」
ここらの土地に慣れていないのだろうか、あまりピンときていない様子だった。
まぁ時間もあるし、案内してあげようか。
『もし良かったら、一緒に』
犬飼「はいは〜い、おまたせ。待った？」
『犬飼先輩！？』
犬飼「ダメじゃん、勝手にフラフラしてちゃ。」
『いや、待ったも何も、別に』
犬飼「お兄さん、この子はダメだよ、他当たってね。」
「……」
チッと小さく舌打ちを残して、男性は去っていった。
か弱そうな雰囲気はどこにもなかった。
『え、あのお店…』
犬飼「姫坂ちゃん、あぁいうのはナンパって言うんだよ。
ホイホイついて行っちゃダメじゃん。」
『お店聞かれてただけですけど…』
犬飼「あぁいう連中は御礼ってかこつけて可愛い女の子を連れ去ろうとするんだよ。」
『なるほど…。』
犬飼「今日は1人？いつもの子たちは？」
『出水と米屋は、ランク戦があるって先行っちゃいました。』
犬飼「なるほどね、じゃあこのままおれと一緒に本部行こうか。
あ、そうだ、隊室に美味しいイチゴ置いてるんだけど、食べに来る？」
『いいんですか！？』
るんるんと浮き足立つ私には、もうさっきの男性のことは頭に残っていなかった。
二宮隊の隊室には誰もいなくて、少し申し訳ない気持ちになりながら、犬飼先輩と2人でイチゴを食べた。うまい！
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作者名：通りすがりのいぬ | 作成日時：2022年2月20日 15時
