【WT】青春まったなし！！！ (ページ31)

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ヒトメボレページ31

烏丸京介は姫坂と初めて会ったときから彼女のことが好きだった。
本人も自覚しているし、辻ほどではないが知っている人も多い。

自身の容姿が優れているかどうかは分からないが、コンプレックスだと思う箇所はないし、周りから褒められることが多い。
最強のチームと謳われる玉狛第一に所属しているし、誰にも引けを取らない魅力の詰まった男だった。

そんな烏丸が想いを寄せている女性が姫坂で、彼女の魅力に思うところを挙げだすとキリがないらしいが、まず挙げられるのが性格らしい。

そして何より

『京介〜。』

間伸びした穏やかな声で、自分を下の名前で呼ぶことに優越感を全身で受け止めていた。

彼女が下の名前で呼ぶ異性は、烏丸を除けば木崎と緑川しかおらず、その中でも呼び捨ては自分だけなのだ。
そのことに、何にも代え難い優越感を味わっていた。

同じクラスで、自身よりも共にする時間が長いであろう、出水や米屋でさえ辿り着けていない場所にいると思うと、それだけで心が躍る。

思えば、彼女に「とりまる」とも呼ばれたことがない。出会ったときから「京介」と呼ばれていた。

当時はまだ太刀川隊の一員だった頃、出水を通して知り合ったのが最初だった。
今とそう変わらない見た目だが、雰囲気は当時の方が少し大人びていたように感じる。おそらく人見知りのせいだが。

出水「今日は何する〜？って、京介いんじゃん。」

『私は平気だけど…、入って大丈夫？』

出水「多分いける。

京介〜、客入れてもいい？」

烏丸「はい、大丈夫ですよ。俺向こう行った方がいいすか？」

出水「あぁ、いいよ、どうせすぐトレーニングルーム入るから。

柚宇さ〜〜ん、」

『お邪魔します。』

控えめにそう言って足を踏み入れた姫坂の声に、思わず振り返ってしまった。
あまりにも耳触りのいい声で、どんな人なのか、そんな興味が抑えられなかった。

『あ、キョウスケだ。お邪魔します。』

知らない女性から、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったが、いきなり下の名前で呼ばれた。
多分出水から「京介」と名前だけ聞いていたのだろう。

この瞬間、恋に落ちる音がした。