熱に侵されて ページ28
姫坂が風邪をひいた。
米屋がその知らせを聞いたのは、朝のホームルームの時だった。
いつも自分よりも早く登校しているはずの姫坂がいないことに違和感は覚えたが、まさか風邪だったとは。
米屋「バカは風邪ひかねぇはずなのにな。」
出水「自分のこと言ってんのか？」
米屋「うるせぇ弾バカ。今日ランク戦？」
出水「弾バカって言うな槍バカ。
今日はランク戦ないけど、うちの隊にメガネくんくる予定なんだわ。」
米屋「ほぉ〜ん。」
出水「心配なら行ってやれば？ヒメんとこ。家知ってるだろ。」
米屋「いや知ってるけど。」
珍しく歯切れの悪い米屋。
よく姫坂を迎えに家には行くものの、中には入ったことがないのだ。
もしもの時のために、出水と米屋は合鍵を預かっているのだが、一応相手は女の子だからと気が引ける。
米屋「王子先輩とか行くんじゃねぇの？」
出水「王子隊は夜に俺らと一緒に防衛任務。」
米屋「ボーダーの宿泊施設使ってるかもしんねぇし。」
出水「昨日は俺が家まで送った。
なに、お前ビビってんの？
大丈夫だって。お前には風邪引いてるヒメを襲う勇気なんてねぇよ。」
米屋「そういうことじゃねぇよ！
うっせぇなぁ、行けばいいんだろ、行けば！」
出水「初めからそう言え。」
勢いに任せて言ってしまった。
その後1日中「何を持って行けばいいのか、いやヒメのことだし家に色々揃えているんじゃないのか。本当に行くのか」などと自問自答を繰り返す。
いつもは長くて退屈な授業時間も、今日は一瞬で過ぎ去っていった。
内容は一切頭に残っていないが。
そして、放課後というものは残酷にもあっという間に訪れる。
出水「ビビって行かないのが一番ダサいからな。」
米屋「わぁってるよ！コンビニ寄ってから行く！」
出水「間違っても襲うんじゃねぇぞ〜。」
米屋「一言余計なんだよ！」
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作者名：通りすがりのいぬ | 作成日時：2022年2月20日 15時
