シカトリス (ページ2)

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其ノ壱ページ2

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目が覚めると、俺はふかふかなソファみたいなのに座ってた

誰かが控室まで運んでくれたのだろうか、

そう思った時、頭上から声が聞こえた

「次はー終点ー、東町ー、東町ー、」

電車のアナウンスのような声がして、プシューと音が鳴る

稽古中か？でもそんな脚本見たことない

そもそも、控室までこんなはっきり聞こえたっけ…

俺は曖昧な意識の中でぐるぐると頭を動かすが、なかなかはっきりしない

うっすらと見えるのは、赤いソファとゆっくり移り変わる窓の外の景色

しばらくぼんやりと眺めていたが、ハッと我に返る

『なんで電車？』

俺の口から一番に出たのはそれだった

でも、どうして電車に乗ったのか、ここに来るまでに何があったのか、

全く覚えていなかった

記憶喪失、ってやつ？

でも自分の名前とか年齢は覚えてるし、なんなら携帯の番号も…

あ、そうだスマホ。それさえあれば解決だ

位置情報も、今までの経路も、全部分かる

俺はいつもスマホを入れている、ズボンのポケットに手を入れた

あれ、

いつもそこにあるはずの、冷たい板の感触がない

『嘘だろ…』

俺は座席に手を滑らせるが、ふわふわな感触がするだけ。

俺が肌見放さず持っているはずのスマホがない

寝ていた間に盗られたか、いやまさかそんなことはないはずだ

だって俺は座ってるからスマホは壁側にあって誰にも取れない

じゃあ家に忘れたか、

だとしてもスマホを置いて電車には乗らないだろ普通

そんな感じで1人で静かに焦っていると、電車が止まった

「終点ー、東町ー、東町ー。」

終点、ということは俺はここで降りなければならない

でも俺は今自分がどこにいるのか分かってない

そこで俺が今やるべきことは一つ。

『あのー、近くに劇場ってないｄ』

「あ、やっと起きた？」

『は？』

訪ねようとした俺の声に被さって聞こえてきたのは、俺と全く同じ声

周りを見回すがこの場には俺と目の前の車掌さんしかいない

でもこの車掌さんから俺と同じ声が出るわけｎ

「僕だよ、君の目の前の車掌さん。」

出た、思いっきり出た

どうやら俺は、幻覚を見ているようだ

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2023.1.10