怪我 3 ページ13
「うん、そうする。……けど、アタリくんは戻ってていいんだよ……?」
手当てもしてもらったし、バトル前にアタリくんは早く帰ってゲームをしたいとぼやいていた。
痛みが引くまでここにいればいいだけの話だから、付き合わせるのは申し訳ない。
「戻る必要ねーよ。…………むしろ、俺はこのチャンスを無駄にしない。」
へ、と間抜けな声が私の口から発せられたが、アタリくんは聞こえなかった様子で私を抱きしめた。
続けてえ、ぁ……とよくわからない声を出してしまう。
「…………好きだ、A」
抱きしめられているせいで、アタリくんの綺麗な声が心地よい大音量で耳に響く。
息が耳にかかって少しくすぐったい。
身体の感覚に遅れて、私の脳はアタリくんの言葉をキャッチし、理解した。
告白だ。
そう思った。というか実際そうだ。
ゆっくりと身体を離したアタリくんは、私の手に自分の手を重ね真っ直ぐと私を見つめていた。
煌めくスカイブルーの瞳に私の全てを吸い込まれそうだった。
「ぁ……、と、」
混乱で上手く言葉が話せない。
……そんなまさか、両想いだったなんて。
「返事……は」
アタリくんもアタリくんで相当な勇気を振り絞っていたのか、返事を催促する声が少し震えていた。
私がゆっくりと頷くとアタリくんは一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに抱きついてきた。
さっきよりも腕の力が強い。
「っはは、うわー、まじか……!すげー嬉しい……」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ若干痛いけど、嫌ではない。
そっと抱きしめ返すと、「もっと」と耳元で声がした。
腕に少しの力を入れると、アタリくんは満足気に微笑んだ。
「次Aと二人になったら言おうって決めてたんだ。いつもは他の誰かがいたりするからさ。」
少し遅れて「言ってよかった」と付け足される。
私も、怪我しててよかったなんて妙なことを思ってしまう。
けど、そっか、これからは怪我なんかしなくてもアタリくんの隣に居られるんだ。
「……好きだよ、アタリくん」
そういえば言ってなかった二文字を告げると、想定の範囲外だったのかアタリくんの顔が熱くなった。
「ばーか、知ってるっての」
アタリくんは私の背中に腕をまわしたまま少し距離をとり、再び近づいて、私の唇に口付けた。
ファーストキスは大好きなチョコレートみたいに甘かった。
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作者名:すた | 作成日時:2017年12月29日 4時