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その後大地さんとスガさんが同じタイミングで出て来た。
スガさんは真っ先に日向の元に突撃して、「俺がいなくても昼休みの自主練サボんなよ〜!?」と頭をグリグリ撫で回していた。
日向はちょっとムッとした様子で「サボりません!俺バレー大好きですから!!」と反論していた。
そんなスガさんを横目に見ていた大地さんの胸元、第二ボタンがないのに気が付いた。西谷が。
「あー!!大地さん、第二ボタン誰にあげたんすか!?もうないなんて!!」
「西谷目敏いなー」
今の今まで日向を撫でくり撫でくりしていたスガさんがいつの間にやら大地さんと肩を組んでそう言った。何たる早業。
「何となくで察しろよ西谷!大地の第二ボタンは、女バレの主将だった道宮が___」
「……スガ」
「あは、めんご」
反省してません、と言わんばかりの軽い言葉に、大地さんはため息をついた。スガさんとは高校入学の時からの付き合いだと聞く。何を言っても無駄だと判断したのかもしれない。
それからスガさんは「あー」と少し何かを考えるような体勢のままそんな声を発したものだから、何事かと思っていると。
「Aちゃん」
不意に真剣なスガさんの声が私を呼んだから、私は一瞬ドキリとした。
「これ、受け取ってくれない?」
「……へ?」
スガさんはぐいっと私にそれを突き出した。
「え、や、あの。スガさん、これ、そう言う相手に渡すものじゃ」
「うん。そういう相手に渡してる。……受け取ってくれる?」
どうもこのやり取りが聞こえていたらしい周りから、「きゃー!」と囃し立てるような声が響いていた。
「やるなぁ菅原」とか。
「あの子確か2年生のバレー部のマネ子ちゃんだよね」とか。
「すげぇ勇気だな……」とか。
……スガさん、ちょっと策士なところあるから。
狡いなぁ。
「……これ、私が受け取ったら、どうするんですか?」
「んー……抱きしめて告白しようかなぁ」
自分の顔に熱が集まってるのを感じつつ、先輩にそう見られている気がすると思っていたのが私の妄想ではないことを認識する。
「第二ボタンって、相当なものだと思います」
「俺もそう思うよ」
「それでも、この手は引っ込めてくれないんですね」
「俺本気だもん」
今日は助けてくれないんですね、大地さん。
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西谷彩香(プロフ) - ネーヴェさん» コメントありがとうございます!今回は……「宝物とは」的に書いていた気がします。案外綺麗にまとめられたんじゃないかなと……!これからも色んな作品を書いていきたいと思ってます、よろしくお願いします! (2018年12月20日 15時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ネーヴェ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほかの小説とはまた違う独特の世界観ですごい感動しました。ここまで色々な人に愛されてきた夢主さんは幸せだったと思います。これからも応援してます!頑張ってください! (2018年12月20日 15時) (レス) id: 39a6bf43e1 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - 蜜柑さん» コメントありがとうございます!楽しく書いていた作品をそうして言っていただけるのは嬉しいです!ありがとうございました! (2018年12月20日 13時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後は泣きそうになってしまいました← いいお話をありがとうございました(?)! (2018年12月20日 6時) (レス) id: 97574853b7 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます!きっと誰も、"過去"に"後悔"はありません。そんな、それぞれの道に進んだ誰かを書きたかった。楽しかったです。これからも色んな話を書きたいなと思っているので、よろしくお願いします! (2018年12月19日 23時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年11月20日 1時