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白いハンカチの思い出 ページ32

*








「……とまぁ、そんな訳で、それは僕達の幸せの白いハンカチなんだ。彼女、本当に嬉しそうでね。今でも昨日の事のように目に浮かぶよ」



おじいちゃんは、おばあちゃんの遺品整理を始めてから、ほとんど笑顔を絶やさずに、嫌な顔一つすることなく、私に話して聞かせてくれている。


おばあちゃんの過去を知らない。

おばあちゃんの思い出を知らない。

おばあちゃんの記憶を知らない。


おばあちゃんにもう二度と会えなくなってから、私はおばあちゃんを知るために遺品の思い出を巡る。



「おじいちゃん、他の物も、知ってるの?」


「他の物?」


「うん。……私が手に取る物手に取る物、全部おばあちゃんの思い出を教えてくれるから。……おばあちゃんと出会ったの、さっきの話からしたら、おばあちゃんが会社勤め始めてからなんだよね?」


「そうだよ」


「なのに、全部知ってるから」


「約束したから、聞いただけだよ」


「でも。おじいちゃんは、それを全部覚えてる」


「彼女が話してくれたことだからね。僕が好きな彼女の言葉を、忘れるだなんて寂しいだろう」


「……私、おじいちゃんみたいな人に出会いたいな」


「うん?」


「おじいちゃんみたいな人となら、幸せになれる気がする。ううん、きっと幸せになれる!」



私が力説かのごとく語気を強めると、おじいちゃんは「それは光栄だなぁ」と笑う。

それから、おじいちゃんは机の近くから立ちあがって押し入れを開ける。


私もその後ろから覗き込むと、奥に箱が見えた。



「おじいちゃん、その箱何?」


「んん……?……これかい?」


「そう、それ。その黒い箱」


「箱だけじゃあ分からないなぁ。出して、開けてみようか」


「うん」



私は数歩後ろに下がり、おじいちゃんは箱を「よいしょ」と押し入れから出した。

埃をかぶった、黒い箱。


少し大きめのその箱はガムテープで止められていて、おじいちゃんがそれを端からベリベリと剥し、蓋を開けた。



「……彼女の卒業アルバムじゃないか」



新品同様、とまでは行かずとも、半世紀以上も経ったアルバムと言われれば、「嘘だ」と言ってしまうような綺麗さだった。

それを取り出したその下に、私はそれを見つけた。



「……ボタン?」



烏野、と書かれたボタンが数個、赤いリボンが一つ、そこにはあった。








*

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西谷彩香(プロフ) - ネーヴェさん» コメントありがとうございます!今回は……「宝物とは」的に書いていた気がします。案外綺麗にまとめられたんじゃないかなと……!これからも色んな作品を書いていきたいと思ってます、よろしくお願いします! (2018年12月20日 15時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
ネーヴェ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほかの小説とはまた違う独特の世界観ですごい感動しました。ここまで色々な人に愛されてきた夢主さんは幸せだったと思います。これからも応援してます!頑張ってください! (2018年12月20日 15時) (レス) id: 39a6bf43e1 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - 蜜柑さん» コメントありがとうございます!楽しく書いていた作品をそうして言っていただけるのは嬉しいです!ありがとうございました! (2018年12月20日 13時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後は泣きそうになってしまいました← いいお話をありがとうございました(?)! (2018年12月20日 6時) (レス) id: 97574853b7 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます!きっと誰も、"過去"に"後悔"はありません。そんな、それぞれの道に進んだ誰かを書きたかった。楽しかったです。これからも色んな話を書きたいなと思っているので、よろしくお願いします! (2018年12月19日 23時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2018年11月20日 1時

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