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他愛ない世間話もそこそこに、私たちはお互いの参考書を開き、それぞれに解き始めた。
赤本だ何だと、にぃたちがあれやこれやと買ってきてくれるものだから、受験勉強に支障はないしむしろありがたいことになっていた。
この問題のポイントはどうだ、とか。
簡単な解き方のメモ、とか。
単純な応援のメッセージ、とか。
私はそれらを見ながらどんどんと解き進めていた。
しかし、どうも隣の茂庭くんは苦戦しているらしく、時折首を傾げていた。
「茂庭くん」
「……っ、あ、え?」
「そこ、私得意分野。良かったら教えようか」
「本当?それは嬉しいな。……この問題なんだけど」
「あー、おけ。まずこれを___」
自分の勉強もそこそこに茂庭くんに教える簡単な勉強会が始まった。
私自身、これ復習になるしなーと教え進めた。
茂庭くんは茂庭くんで、理解が及んでいなかった問題を教えて貰える、理解出来る機会だと踏んだのか、特に何も言わずに私の説明を聞いてくれていた。
ふと、顔を上げた時、目に写った時計は、来た時よりも2時間以上の分の針が進んでいた。
昼から来ていたとは言え、昼ごはん抜くのはなぁと思い、私は茂庭くんに聞くことにした。
「茂庭くんさ、お昼どうすんの?」
「もしかしてもうそんな時間?適当にその辺で買って食べようかなって思ってたけど……あ、峰口さんは?」
「私もそうしようかなって思ってたんだけどさ、ちょうどいいし一緒にどう?そこらのファミレス辺りで」
「俺は良いけど……知り合いに遭遇して気まずくなったりしない?大丈夫?」
「大丈夫だよ、私別に知り合いいても気にしないから」
「そっか。……うん、そっか、そうなら、いいかな。じゃあ、お言葉に甘えて。お昼一緒に食べようか、峰口さん」
少し困ったような、それでいてちょっと嬉しそうな、そんな笑顔を浮かべた茂庭くんは、勉強道具をさっさとしまって立ち上がった。
私もそのあとを追うようにして荷物を片して立ち上がり、茂庭くんのあとに続いた。
「今更なんだけどさ」
「何?」
「峰口でいいよ」
「じゃあ、俺も"茂庭くん"じゃなくていいよ」
私から距離縮めてる感する誤解させたかもしれねぇ、と気がついたのは、ファミレスに入ってしばらくしてからだった。
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西谷彩香(プロフ) - 雄里さん» コメントありがとうございます!こんなに兄弟出したの初めてでした、と言うか何故私はこんなに沢山出してしかも全員シスコンにしちゃったんだろうか。永遠に謎ですね。書いてて楽しかったものが誰かに楽しんで貰えたのは嬉しいです!ありがとうございました! (2018年11月15日 23時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - うー太郎さん» コメントありがとうございます!意外にも見返したら登場人物が多くてラスト一体どうしよーと悩んだ結果あれです、でも割と出せたぜやったね。次回作は別のジャンルの可能性高いのでアレですが!ありがとうございました! (2018年11月15日 23時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
雄里(プロフ) - 完結おめでとうございます。初めからずっと見させていただきました!本当に面白く切ない作品でした。特に好きなところは兄弟全員がシスコンというところです()次の作品も楽しみにしています! (2018年11月15日 23時) (レス) id: e6aa9e061e (このIDを非表示/違反報告)
うー太郎(プロフ) - コメント投稿した直後に更新されたのでし直し!新見でてきた〜嬉し(’-’*)♪ラスト峰口ちゃんらしくて良きです!面白い作品をありがとうございます!これからも期待してまっす (2018年11月15日 23時) (レス) id: c8812ff913 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - shinox2さん» コメントありがとうございます!ううむ、今回で終わりの予定が長引きそうな気がしてきたぞ……兄弟たちのことは間違いなく入れないと「なんで?」のまま終わってしまう……!何とかねじ込みます(笑)ラストまで是非お付き合いください! (2018年11月14日 7時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年10月21日 13時