月の光 26 ページ35
*
開けたと思ったその場所は、よく見たら学校のグラウンドだった。
少し離れたところに見える建物は、よく見たら校舎だった。
グラウンドだったらしい、草が生い茂ったその真ん中に、合田さんはなんの迷いもなく近づいていく。
「ここに、作ったんだ」
大きな、お墓みたいなそれ。
「鎮魂碑だよ。彼女を都市伝説にした、生き残ってしまった僕達が作った、彼女の」
合田さんは優しげに目を細める。
「せめて、安らかに眠って欲しいと思って。……だけど、ただの都市伝説だと馬鹿にして、いつの間にか誰かから、広がってしまっていた」
大きなお墓みたいなそれの足元には、たくさん花があった。
見たことない、と言うか、気にしたことがないから、俺は花はわからなかった。
まじまじとその花を見ていた。
見れば、どうもその花しかなかったから、少しだけ気になって。
「……合田さん」
「……何だい」
「……この花、……"カランコエ"、ですか?」
合田さんは、少し驚いたような表情で俺を数秒見てから、小さく「……そう、だよ」と答えた。
そっか。
こんな花だったんだ。
橋田さんが俺に見せようとしてくれていた花は、こんな、こんなにも。
「……あの、合田さん。俺、橋田さんと……約束してたんです。冬になったら、カランコエを見せてくれるって。いっぱい、見せてもらいました」
「……うん」
「またなって、言ったんです。だから俺、もう一度、会いに行かなきゃいけないんです」
「……うん」
「あの場所で、待っててくれてるはずだから」
「……そうだね、彼女は……橋田はきっと、待ってるよ」
合田さんの言葉を皮切りに、俺は押していた自転車に飛び乗った。
元来た道を、自転車で一目散に駆け抜ける。
あの道に出て、少し走って、そんで、あの場所に戻って来た。
橋田さんは、壁に寄りかかって待っていた。
「おめでとう、ひなたくん。聞こえてたよ、夢が叶ったって」
俺が自転車を急ブレーキで止めると同時に、橋田さんが言う。
俺は、自転車から降りて橋田さんと向かい合った。
「うん。だから、橋田さんに会ってきた!」
「あぁ……そっか、そうだったんだ」
「約束、守ってくれてありがとう!」
「……ううん、こちらこそ、約束守ってくれてありがとう」
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます!日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございました! (2018年10月6日 12時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました!!日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、!とびっくりしました笑 本当に面白かったです!お疲れさまでした!これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年8月15日 8時