月の光 3 ページ4
*
自転車を押しながら、橋田さんと並んで歩く。
橋田さんが言うには、「引き止めてもしょうがないから、途中まで一緒に帰ってくれたら嬉しい」だそう。
俺は「バレーのことしか話すことないから、つまんないかもよ!?」とは言ったけど、橋田さんは「それでもいいよ」と笑った。
バレーは詳しくないから、色んな話が聞けて楽しいって。
「橋田さんってさ、なんか、なんて言うか、話してて楽！」
「そう？」
「うん、うまく言えないけど！」
俺がそう言うと、橋田さんは「そっか、そう、……そうかぁ」と安心したみたいに繰り返した。
そうしてしばらく話しながら歩いて、Ｔ字路に突き当たった時、「私こっち」と左を指した橋田さんに、「俺こっち」と右を指した。
「ここまで、か。……うん、ありがとう、何だかやっと、ちゃんと高校生みたいなことが出来た気がする。お母さん、心配してたから……これで安心してもらえるよ」
「そう？俺何もしてないけど……でも、まぁ、橋田さんが良かったんなら、良かった！じゃあ、またな！」
「え……あ、……うん、またね」
俺は橋田さんと別れると、自転車に跨った。そのまま家まで飛ばして、家に着いて自転車から降りた時に、「あ、」と声をもらした。
「……気にならなかったな、そう言えば」
ギャリギャリと煩く鳴っていた自転車を見下ろして、そう呟いて自転車を止め、家に入ろうと玄関に手をかけたところで、俺はまたしても「……あ、」と声をもらすことになる。
「あー!!橋田さんにまたなって言ったけど連絡先知らない俺!!」
会える保証もないのに、普通に別れて帰ってきたことを、少し後悔した。
正直言って、橋田さんといたあの時間、俺は確かに楽しんでいた。
最近、バレー以外に熱中出来るものも夢中になれるものもなかった。橋田さんに話していた内容がバレーの事だったとしても、楽しんでたんだったら熱中？夢中？だったはずだから。
「また会えると良いなー、橋田さん！」
俺はへらりと笑って、玄関を開ける。
ただいま！と叫べば、ドタドタと騒がしい足音と共に夏が走って来た。
おかえり！と笑った夏の頭を撫でると、夏は「もうすぐご飯だよ！」と言った。
「すぐ片付けて来るって母さんに言っといて！」と言って自室に向かった。
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます！日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございました！ (2018年10月6日 12時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました！！日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、！とびっくりしました笑 本当に面白かったです！お疲れさまでした！これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年8月15日 8時
