月の光の都市伝説 ページ23
*
分かってはいるのだろう。
彼女が亡くなってしまったことは。
理解が追いついていないのだ。
彼女があたかもそこにいるように思うのは。
しかもそれは、1人2人じゃない。B組の生徒、全員だ。担任教師である自分を除いて、全員。
止めるべきだと思った。
だが同時に、私もそこにいるような気がしてしまう。橋田Aと言う少女が、その席に座って、こちらを見ている気がしてしまうのだ。
だから止められなかった。それで彼らが満足するのなら、それで良いと望んでいるのならと。
きっと止めるべきだった。教育者の立場としては、間違いなく、絶対に。なのに私は見逃した。敢えて彼らを見逃した。
あの騒ぎの翌々日、三浪の席は空席だった。
朝直だった私が早くに学校に来たが、それよりも前からずっと、電話は鳴っていたのかもしれない。
こんな朝早くから、欠席の電話だろうかと受話器を手に取った。
『先生ッ!!み、美紅は、美紅は……っ』
ヒステリックな声に、驚いてしまった。
何事かと思ったが、どうやら私のクラスの生徒、三浪美紅の母親らしかった。
三浪の母親からの電話は、あまりにも衝撃的だった。
数日前までひどくやつれていたのに、一昨日からそれが見違えるくらいに明るくなって逆に心配して三浪を見ていたらしいが、昨日の夜唐突に、「……あ、行かなきゃ」とポツリと呟いて家を飛び出して行ったと言う。
あまりにも唐突すぎるその言動に一瞬戸惑い、でもすぐに後を追ったものの、外に出たら既に三浪らしき人影は近くになかったのだとか。
『田んぼ……そうよ、田んぼしかないのよ!?道だって真っ直ぐ……っ』
だから、何かがおかしいと訴えていたのだ。
そして不穏な空気のまま、その翌日。
自宅からもそう遠くない、近くの原っぱで三浪は発見された。既に息はなかった。だが、三浪の顔は、酷く穏やかだった。彼女の体には一切、絞められた痕も、殴られた痕も、見つかりはしなかった。
ただ、その心臓だけがぴたりと動きを止めているような、そんな最期だった。
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます!日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございました! (2018年10月6日 12時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました!!日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、!とびっくりしました笑 本当に面白かったです!お疲れさまでした!これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年8月15日 8時