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月の光の都市伝説 ページ21

*








彼女の容態が急変したのは、彼女が16歳の誕生日を迎える、4日前のことだった。

その日もいつも通り、クラスメイト達と話していた彼女が突然咳き込み始め、口に添えられた手が離れると、その手は血塗れだったと言う。


結論から言うと、当時の医療では、彼女を救うことは出来なかった。


吐血した4日後。

彼女は息を引き取った。奇しくも、彼女の16歳の誕生日だった。


クラスメイト達は泣いた。

泣いて泣いて、「橋田さんと学校に通いたかった」と。

クラスメイト達も遠慮していたのだ。

彼女は、病室から出ることもなく、学校に通える日もきっと来ないと、時折病室に来た時、中で話す医師と彼女の会話によって知っていたから。



けれど彼女の葬儀が済んだ翌日から、学校で不思議なことが起き始めた。

朝学校に行くと、何故か昨日置いたはずの橋田さんの机の上の花瓶が無くなり、そしてその席には、制服を着た橋田さんが座っていた。


教室に一番にやって来たのは、朝練のために毎朝誰よりも早く教室に荷物を置きに来る、野球部の生徒。名は、合田雄己。

彼は教室の扉を開け、中に入った瞬間に大きな声を上げた。当然だ。いるはずのない、いてはならない人が、そこにいたのだから。



「あ、おはよう。合田くん」



だと言うのに、当の橋田さんは何事も無かったかのように「早いね」と笑って席を立つと、合田少年に近付いてきた。



「朝練?」


「あ、あぁ……」


「どうしたの?顔が真っ青だけど……」


「い、いや大丈夫……大丈夫だから!」


「そう?無理はしないでね。……あ、そうだ忘れてた、美紅ちゃんに本、返したいんだけど……美紅ちゃんって、いつ来る?」


「み、三浪なら……多分、もうすぐ」


「そっか。ありがと」



彼女は何でもないように、ただ普通に、至って普通にそこにいた。

合田少年は、それが少し怖かった。

だがそれ以上に、病室で花のように笑っていた"橋田さん"が好きだった彼は、単純に喜びの感情が勝っていた。


そうか、"橋田さん"はやっと、夢を叶えられたんだ。

"橋田さん"は夢を叶えただけなんだ。

死んでなんか、いなかったんだ。


合田少年は足取り軽く、荷物を置いて教室を出て行った。








*

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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます!日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございました! (2018年10月6日 12時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました!!日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、!とびっくりしました笑 本当に面白かったです!お疲れさまでした!これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/  
作成日時:2018年8月15日 8時

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