月の光 17 ページ19
*
翌日。
昨日の日向の様子が異様すぎて気が気じゃなかった俺は、悔しいが日向が少し心配で朝、いつもより早く家を出た。
学校に全力疾走で向かい、朝練のために体育館に飛び込んだ。
……飛び込んだ。鍵は空いていた。つーか、ドアは全開だった。中からも壁打ちしてんのかなんなのか、ボールの跳ね返る音が何度もこだました。
音の方を見れば、オレンジの髪が揺れていた。
「ひっ……日向!!」
「影山？はよー！あ、今日は俺の方が全っ然早かったな！また寝坊ですか影山クーン？」
あまりにも、普通だった。
「ひ、なたボゲェ、」
「な、何だよ！やんのか！」
「お前、だって昨日……」
「はよー。お、今日も日向と影山は早いなー。じゃあ大地が来るまで俺がトスあげるから打ってよ」
「アス！」
「……アス」
「影山ー？……日向、ごめんなー。ちょっと待ってて。影山」
「……スガさん」
体育館の外に連れ出された俺は、スガさんと向かい合った。
「日向だろ」
「……うす」
「おかしいよな。昨日まであんなに何かに取り憑かれたみたいにやつれてたのに。急にいつも通りに戻ってさ」
「……うす」
「で、影山は昨日、日向追いかけて何見た？」
スガさんの問いに、俺は少し悩んでから口を開いた。
「コンクリの壁に向かって発狂した日向、……っす」
「壁？」
「……うす」
その時の状況を聞かれて、俺は昨日のことを思い出しながら語る。
「俺が日向に追いついた時には、既に壁に向かって歩いてて……いや、何なら一瞬、俺の、見間違いかもしれねぇ、けど……壁に、日向の手が吸い込まれてるような」
「壁に？手が吸い込まれる？」
「うす。……で、声掛けて引き戻したんす。何やってんだって。そしたらあいつ、行かなきゃって」
「行く？どこに？」
「壁を指さして、見えないのかって。すぐそこに"橋田さん"がいるのにって」
そこまで言った途端、スガさんはその顔を青くした。
「ほ、本当に……本当に、日向は"橋田さん"って呼んだのか!?」
「間違いないっす。……どうしたんすか」
「それ、だって……」
スガさんは「笑えねぇ……」と呟いて、それから俺に教えてくれた。
とある、小さな昔話を。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます！日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございました！ (2018年10月6日 12時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました！！日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、！とびっくりしました笑 本当に面白かったです！お疲れさまでした！これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年8月15日 8時
