月の光 15 ページ16
*
次の日も、その次の日も。
橋田さんは現れなかった。
流石に9時もすぎた遅い時間に、しかも男と会うために家を出るだなんて、良く良く考えたら、そんなのフジュンイセイコウユウ？って言うんだろ？
すごい心配してくれる優しいお母さんなら、きっと心配してそう言ったっておかしくない。
だから俺は、そう思うことにした。
そうじゃなきゃ、そう思わなきゃ、俺の心が保てなかったから。
＊
「日向、最近元気ないよな」
ポツリと、スガさんがそう言った。
それは一週間くらい前からずっと元気がなく、何をしていても上の空で、挙句バレーですら気が回っていないのか、旭さんのスパイクを顔面にくらい、起き上がってもまたぼーっとして、を繰り返していた日向のことだ。
そして、居残り練習に参加することもなく、ふらりと覚束無い足取りで体育館を出て行き、外からの足音が聞こえなくなった時だった。
「……まぁ、確かにあの日向がね。あそこまでバレーにすら身が入らないなんて、よっぽどのことがあったとしか思えないな」
大地さんですらそう言って、誰もがあの馬鹿を心配する。
山口も「どうしたんだろうね、日向」と呟いていた。月島はそれには冷たく「知らないよあんなチビ」と言った直後、「僕も上がりまーす」と言って体育館を出て行った。山口は慌ててそれを追って行った。
俺はどうすることも出来ないまま、やり場のない怒りを吐き出すことも出来ず、「クソがッ」と吐き捨てる。
ボールを持って、高く上げて、そして飛ぶ。ジャンプサーブ。……決まらない。
もう一度持つ、上げる、打つ、……やはり決まらない。
「……あのボゲ」
許さねぇ。なんかむかつくどころの話じゃねぇ。
て言うか、なんで俺があいつに気を取られて自分のペース崩されなきゃなんねぇんだよ。気に食わねぇ。
ムカつく、ムカつく、ムカつく。
だから俺は、その日の居残り練習はやめた。自転車とは言っても、俺の足ならあいつに追いつくくらい出来るはずだ。出来る。いややる。
「待ってろクソボゲ日向!!」
俺も、荷物をひっつかんで体育館を飛び出した。
*
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます！日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございました！ (2018年10月6日 12時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました！！日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、！とびっくりしました笑 本当に面白かったです！お疲れさまでした！これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年8月15日 8時
