月の光 11 ページ12
*
次の日も、その次の日も、毎日毎日俺は練習終わり、自主練も含めてガッツリ好きなだけやった後、残っている人の中でも誰よりも早く帰るようにしていた。
大体いつも同じくらいの時間に帰れば、あの道で橋田さんが待ってるから。
あの辺は人通りが少ない。街灯はほとんどない暗い道だけど、だからこそちょっと心配だけどそこまでの不安はなかった。
他愛ないお互いの学校の話をして、橋田さんを家の前まで送って、後は家まで全力で自転車を漕ぐ。
……そう言えば、最近あのおじさんを見かけることが増えたような。
あんまりにもよく見かけるもんだから帰りがけ、俺は「こんばんは」って声かけるようになった。
おじさんは少し複雑そうな顔で俺を見て、「こんばんは」って返してくる。
そんな日が何日も続いて、一ヶ月も続いた頃。
練習はいつも通りだし、土日の東京遠征とかもあって大変だったけど、それ以外は結構"いつも通り"だった。
今日も橋田さんを送った後、また俺はＴ字路を右に過ぎてすぐ、またおじさんを見かけた。
俺はずっと気になっていたことをぶつけようと、自転車から降りておじさんに声をかけた。
「こんばんは！」
「あぁ、君か。こんばんは」
「あの、俺聞きたいことがあって！」
「……僕に？何かな」
「俺が挨拶し始めた頃からだけど……何か、すごい変な顔……あっ、じゃなくて不思議そうな……顔……してる気がして。……俺に何かありますか？」
そう尋ねると、おじさんは少し悩むような仕草を見せた。
それから意を決した様な表情で、おじさんは口を開いた。
「……君、向こうから来るよね、いつも」
「え？……あ、はい！友達の家がそっちで！送って、それから帰るんです！」
「だけど……、……いや、……違うか。君は、そうか、まだ知らないのか」
「へ？」
おじさんは「良いんだ、気にしないで」と軽く手を振った。
でも、その言葉に付け加えた。
「でも、」
「はい？」
「気をつけないといけないよ。……気付いてないのなら、なおさら。きっと、彼女も分かっているだろうけど、絆されたら、そこで終わりだ。……良いね、君。これからも彼女と居たいなら」
おじさんの言っている意味はさっぱり分かんなくて、じゃあ気にしても仕方ないか！ってそんな言葉を飲み込み、頷いた。
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます！日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございました！ (2018年10月6日 12時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました！！日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、！とびっくりしました笑 本当に面白かったです！お疲れさまでした！これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年8月15日 8時
