月の光 10 ページ11
*
放課後、やっぱり烏野来たら？って言った。
自転車を押して、昨日みたいに橋田さんと一緒にＴ字路を左に曲がる。
橋田さんは「部活に入ったから放課後は空いてないんだ」と苦笑した。
すぐを右に曲がれば、もう目と鼻の先に橋田さんの家。
何部？って聞いた。
曲がって一軒目の家の前を通り過ぎた。
橋田さんは「聞いて驚け、何と美術部！」とドヤ顔をした。
曲がって二軒目の家の前を通り過ぎた。
全然意外じゃないけど？って笑った。
曲がって三軒目、橋田さんの家の前で止まった。
橋田さんは「嘘だ〜」と少し拗ねたような顔をした。
数歩進んで、玄関の取っ手に手をかけた。
「送ってくれてありがとう」
「いーえ！」
「……部活も入っちゃって、放課後暇じゃないから……でも、話したいし……また、待ってても良い？」
振り返って、橋田さんは俺に伺いを立てるかのように聞いてきた。
俺は少しだけ拍子抜けして、それからケラケラと笑いながら言った。
「やめろよって言ってもやめなかったのに、ここで聞く!?」
「だ、だって！」
「だって、会えなくなるもんな！良いよ、何時に帰るか分かんないけど、大体この時間だし！いるって分かってれば怖くないし！俺がちゃんとここまで送るし！」
ニカッと笑ってそう言うと、橋田さんは安心したように笑った。
「良かった……」って呟いたのは、あえて聞こえないふりをした。
「じゃあ、また明日な！橋田さん！」
「！……うん、また明日ね」
橋田さんが少しだけ驚いて、それから嬉しそうに笑って、玄関を開けて中に消えた。
それを見届けてから、俺は来た道を戻って、Ｔ字路を右の方へと自転車を思いっきり走らせた。
途中、俺と橋田さんを追い越したおじさんを追い越した。おじさんは自転車を押して歩いていた。
Ｔ字路を右に曲がってすぐのところで追い越したけど、ずっとここにいたのかな、あのおじさん。
「……ま、いっか！」
影山に「何も良くねーよ！」と怒られた時と同じような言葉を繰り返して、俺は自転車を漕ぐ足をさらに速めた。
だから当然、ほぼ一瞬でそのおじさんを追い越した俺の耳に、言葉が届くはずがなかった。
おじさんが呟くように言った、その言葉が。
「…………あの子、今、何処から来たんだ……？」
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西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます！日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございました！ (2018年10月6日 12時) (
レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました！！日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、！とびっくりしました笑 本当に面白かったです！お疲れさまでした！これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2018年8月15日 8時
