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やとは本気でやばいと思うよ。そりゃ、顕現当初からこれだしね。流石にね。
「……そう言や、大将。俺に何か用があったのか?基本何かなきゃ来ねぇだろ?」
「あー、そうだね、そうだった。出陣を知らせに」
特に用はないけど、ないって言えばやとはすごく喜ぶだろう。
でも実際今さっき「そう言えば」程度に思い出して顔を出しただけで、多分この先こんなことは早々ない。期待させるのも可哀想だし。
「出陣……か。しばらくぶりだな」
「あんまりやとに心労かけたくないから回してなかったんだけど」
「心配……してくれてたのか?」
きょとんとしたその顔はさっき顕現したばかりの薬研藤四郎とそっくり、いや全く同じだなこれ。
「……してなきゃわざわざ離れに押し込んだりしないから」
「……なぁ、大将」
「何」
「今すげぇ大将を抱きてぇ」
「……ん?」
「こっち来てくれよ」
ふわっと笑うその顔は見た目年齢相応の少年のあどけない笑顔……っておいコラお前そんな顔すんなよ不覚にも可愛いって思っただろ。言ってることは全然可愛くないからな。
「……来てくれねぇのか?」
「泣きそうな顔しないでよ……」
そんな顔されたら何も言えないだろ……。
大人しくやとの方に寄ると、やとは嬉しそうに笑って私を抱きしめた。
「……安心するな、これ」
「そりゃ良かったね」
「こう、良い感じに柔いな」
「処す」
これはキレていいと思うんだ。やと、それは言っちゃあかんだろ。
「あーいや、語弊があるな。大丈夫だぜ大将、柔いのは胸の話で」
「なおタチが悪い処す」
何だって何千年生きて人間見続けて、分からないんだ。男士でも何でも良いけど女心を学んでくれ。
「大将、出陣のことだが」
「ん、何」
「何処に出陣すりゃあ良い?」
「会津」
「会津か……土産の希望はあるか?」
「無事に帰って来たらそれでいい。と言うかいい加減離して」
「まだ大将を堪能してない」
「残メンってこの事を言うんだな……」
やっと離してもらったのはそれから数分後。
「俺はいつでも待ってるぜ、たーいしょ♡」と大抵の審神者を悩殺させるあざといそれで部屋を去る私に言った。
バグってても、そりゃ、あれ、残すよなぁ。
小さくため息をついて、私は離れを後にした。
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サユリ(プロフ) - はい。楽しみにしているので、更新頑張って下さいね! (2018年4月22日 13時) (レス) id: c69002fcba (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - サユリさん» コメントありがとうございます。更新頻度はマチマチですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです! (2018年4月15日 7時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
サユリ(プロフ) - 凄く、面白いです!更新頑張って下さい。応援してます。 (2018年4月15日 0時) (レス) id: c69002fcba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年4月7日 21時