今更と後悔 1 ページ20
*
マネージャーとして入部して以来、私は先輩たちの名前を覚え、仕事内容の確認をした上で、今ではすっかり馴染め、楽しく部活をしている。
雪絵さんもかおりさんも優しくて、毎日が楽しい。
同じ部活だからと赤葦くんと話す頻度も増え、奏帆もいい加減飽きたのか、｢ハイハイ、今日もバカップルですねー｣なんて頬杖を付きながら言うのを、私と赤葦くんは笑いながら見る。
そんなある日の帰り道。
その日は月曜日。いつもより少しだけ部活が早く終わる日だったので、まだ明るいうちに学校を出て、家に帰ろうとする。
が、校門の前に人がたくさん居て、簡単に抜け出せなさそうだったので、裏門から迂回しようかと思った時だった。
その群衆の中から奏帆が出て来て、私を見つけると私の腕を掴んで叫ぶ。
｢見つけたー!!まだ帰ってなかったよ！｣
それと共に、グイグイと腕を引かれ、その群衆の中に押し込まれる。
そして真ん中に押し出され、何事だ、と思いながら体制を立て直して奏帆に文句を言おうとしたその時だった。
｢A、｣
何処か聞き覚えのある、懐かしい声。
少し前まで当たり前のように聞いていたその声は、私を退部へ追いやった声の一つ。
｢…どうして此処に居るの、此処東京だよ、分かってる？｣
｢分かってるよ。……今月号の月刊バリボー見て、いてもたってもいられなくなったんだよ｣
｢…だから？それだけで東京まで来る理由が何処にあるの？｣
私は振り向いて、その顔をしっかりと見据えて言う。
｢＿＿＿＿矢巾｣
青葉城西高校男子バレー部の、同級生にしてセッターの矢巾。
真剣な眼差しを私に向けて、しかしそれはすぐに崩れ、泣きそうに顔をくしゃりと歪めて私に近付いてくる。
｢……俺っ…お前の事…信じてやれなくて…っ｣
｢…その話なら、もう要らないよ。聞きたくないし。…じゃ。｣
キツめにそう返し、私は矢巾の横を通り過ぎる。
｢待ってくれ！…話を聞いてくれよ、頼むから｣
引き下がらない矢巾に、私は口を開く。
｢……人前で堂々と話したいって言うなら、このまま此処で話したらいいんじゃない｣
その言葉で、矢巾は、歩き出した私を追って来た。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 294人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西谷彩香(プロフ) - ?ルナ??さん» そう言って頂けて良かったです！ありがとうございます!! (2017年1月30日 22時) (
レス) id: 237a91988d (このIDを非表示/違反報告)
?ルナ??(プロフ) - すっごい面白がったです！！泣きました！！ (2017年1月30日 21時) (レス) id: 4edd0d369a (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - ふじとーさん» ありがとうございます！そう言って頂けたなら光栄です！ありがとうございました！ (2017年1月28日 14時) (レス) id: 237a91988d (このIDを非表示/違反報告)
ふじとー(プロフ) - 泣いた。素晴らしい作品をありがとうございます。完結までお疲れ様でした！ (2017年1月28日 14時) (レス) id: 4901deebb9 (このIDを非表示/違反報告)
西谷彩香(プロフ) - マカロン♪@塩きゃらめるさん» いえ、コメントありがとうございます！何が普通かは、分からないところもありますが私なりの、ある意味でのハッピーエンドを目指しました。そう言って頂けて良かったです、ありがとうございました！ (2017年1月26日 23時) (レス) id: 237a91988d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西谷彩香 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時：2017年1月20日 1時
