否定する。 ページ8
*
付き合い始めて早いもので、もう一ヶ月が経とうとしていた。
席も変わることなく、相変わらず僕の隣に座るA。最近では、隣にAが座っているのを確認して安堵する、なんて言うのが日常になっていて。
「蛍、移動教室だよ?」
「ツッキー行こ!あ、瀬良さんも一緒に行く?」
「良いの?」
「良いよね、ツッ……ツッキー?」
どうにも、僕は顔に出ていたらしかった。
「嫌だったら良いよ?山口君と二人で行きなよ蛍」
「違うんだけど」
そこだけは、即答した。
変に誤解されたくないし。元々こんな性格だから、嫌味な態度を取ったりしてきた事もあって、伝えたいことを伝えられないとか、勘違いされるとか、良くあった。
でも、これだけは誤解されるわけにはいかなかった。
だって僕は、どうやらAが好きで好きでたまらないらしいから。
誤解されるなんてそんな事、あってたまるかと言う危険を察知して、本能で動いたと言っても良いと思う。
「即答だねツッキー、むしろ食い気味に答えたね」
「そうなら良いんだけど、」
「…山口、先行って。後、僕とA、次の授業サボるから。うまく言っといて」
「え!?あ、分かったよ任せてツッキー!!」
「え!?ちょ、山口君!?私は授業に…」
「行かせないけどね」
そうして、僕はAの手を引いて、移動教室とは逆ほうこうにあるきだし、屋上に続く階段に進んだ。
辿り着いて屋上に出る…訳ではなく、屋上の扉が目の前にある踊り場で僕は止まった。
「蛍、授業サボるって…私結構困るんだけど、」
「知ってるけど?」
「じゃあ何で…」
「言わなきゃ分かんないの?」
「…え?」
「…僕はさ、手に入れたいものは何としても手に入れたい。僕はAが欲しかった。だからAに告白した。けど、いざAを手に入れてみたら…今度はさ、Aの全てが欲しくなっちゃったんだよね」
僕は笑った。ニコニコ、ニコニコと、不気味なくらいに。
*
12人がお気に入り
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2016年3月9日 19時