だから、 ページ20
*
食べ物もいい加減底をつき、ふたりは並んで座ってぼうっと洞窟の上の方を見上げる。
そのふたりの顔には、何故か笑顔を浮かんでいた。
「う〜ん…苦しいけど、安楽死を求めてたわけじゃないし…このままでもいいかもしれない」
「Aがそれでいいなら、僕は構わないけど」
ふたりは幸せだった。
二人で生きていける世界がないのなら、いらないとさえ思えるほどに。
誰も、彼らを否定してはいなかったのに。
勘違いは勘違いを生み、連鎖は続く。
「…そう言えばさ、蛍……」
「何」
「…なんで、こうなったんだっけ」
「…………さあね」
ふたりは笑った。
これ以上、どうすることも出来ないからだ。
食べ物をまともにもう食べてはいなかった。そんなふたりに、動く労力は残っていない。
「…今更だけどさ、蛍」
「何」
「…私たちがいなくなったら、どうなるんだろうね」
「さあね……何も、変わらないんじゃない?」
「それを見てみたいなあ」
「死んだら見るものも見れないけどね。何馬鹿な事言ってんの」
「でも、好きでいてくれるでしょ?…私が、どんなに馬鹿でも」
「そんな当たり前の事、聞かないでくれる?」
Aは目を閉じた。僕と話に講じていたけど、どうやらもう疲れたようだ。
「…なんか、さ………すごい、眠い……」
「寝れば?傍に居るし、安心しなよ」
「ん…」
目を閉じたAは、微かに息をしていた。まだ生きてる。大丈夫。
一人になって、考える。
僕の愛は恐らく、普通じゃない。でも、僕としてはこれが普通で。一般人からしたら、きっと、危ない人だと思われるタイプなんだろうと思う。昔、なんかのドラマで見たヤンデレってやつみたいな。
ただ、僕はヤンデレなんかじゃないのは、分かる。周囲に危害を加えた覚えはないし、Aに対してもない。一時Aを閉じ込めはしたけど、本人が良いって言ったから、その場合は含まれないだろう。
「ほら、ね…僕は普通だよ」
僕の愛を、誰かが異常と言うのなら。
僕は胸を張って言い返せる。
*
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作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2016年3月9日 19時