国定図書館の暗殺者 (ページ38)

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権利の時間ページ38

椚が丘学園の旧校舎がある山の周りはバリケードや自衛隊によって固められていた。

　「チッ」

　私は皆と自衛隊が揉めているのを、冷ややかな視線で、しかし怒りを持って見つめていた。烏間先生…否、烏間さんが皆を説得しようと話をしているが、誰も聞く耳は持たないだろう。

　「ご覧下さい！アレが生徒達でしょうか！？
　怪物に支配されていた哀れな(・・・・・・・・・・・・)！！！」

　後ろを振り返ると何台ものカメラを抱え、シャッターを切り、スクープを狙おうとしている記者達が居た。国木田先生や花袋先生、藤村先生の執拗な取材とは全く違う――【執拗な取材】。人に伝えるとか、自分の考え方、アイデンティティー……そう云ったモノを全く感じさせない取材。ただ、民衆が驚喜するようなモノを求める。

　ピロリン♪

　「たがわ先生からか？」

たがわ@カッパワニ大好き司書さん、戻った方が良い
A無理です。決意はあります
菊池@親友が風呂に入らない江戸川の姿が見えない
Aはい?
たがわ@カッパワニ大好き何処にも居ないんだよ!
A申し訳ありません。ごめんなさい

　「もう、戻れない」

　私は小さく呟いた。
　先生方に嫌われても良い、初めて経験した【学校】と【クラスメート】を守るためなら。

　一歩一歩、踏みしめるようにコンクリートの上を歩く。
　皆から離れた場所で、私は一人の自衛隊員に声を掛けた。

　「通して貰えませんか？」
　「なっ。ﾊｧ……君もあの学校の生徒か、悪いが……」

　スッ。
　私はジャケットについているバッツを無言で見せた。

　「三分ほど前に連絡がありました。あの山の何処かに”ユウガイショ”が落ちていると」
　「はぁっ？」
　「私は椚が丘国定図書館の特務司書にして錬金術師」

　「これより、本の回収に向かいます」

　昔々、政府の人たちに向けていたような顔で
　笑顔を向けた。

　「通って良いですね？」

　私の母をそうしてように、
　私はなんだって使おう。
　

　きっと――母も許してくれる。

　私の名前は、本名は

　小泉 A。