国定図書館の暗殺者 (ページ33)

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似非誕生日の時間　（三月三日）ページ33

「誕生日お目出度う！正宗！」

　元気に腕を振り上げ、花袋は正宗白鳥の肩をたｔ……。

　「ちょぉぉーと待ったぁ！」
　「独歩」

　花袋の腕をがっしりと捕まえてきた友人・国木田独歩は息を切らせながら鋭く叫んだ。

　「よく、見てみろっ！それは、それは…」
　「なっぁ！は、ハリボテぇ！い、いつの間に」

　正宗白鳥(ハリボテ)を見て絶叫している花袋と国木田を見ていた徳田秋声が深いため息をついた。正宗白鳥(ハリボテ)に近づいて、顔に張ってあった張り紙をべらりと剥がした。

　「ん？“知名度のなさに嫌気がさした。これ以上、一般人と間違われるのは不愉快だ。正宗”」

　張り紙に書いてある言葉を音読した独歩は、暫し沈黙した。
　花袋は徳田の方をちらりと見た、島崎藤村もそれに習った。

　「……いや、居たなら、最初っから云えよなとーそん」
　「ご、めん。でも、花袋。正宗の誕生日を祝いたいなら、知名度を上げてあげるしかないんじゃ無い？」
　「…藤村。連続しすぎてよく分からないよ」

　国木田は見かねて、三人の顔がよく見える位置に移動し、花袋の肩を叩いた。

　「よーし、独歩サンに任せろ！つまり、白鳥について語りまくれば良いんだな！」
　「……成る程！」

　納得した様子を見せた花袋は、どんっと図書館の床を踏んで宣言した。

　「秋声！」

　嫌そうな顔で返事をする秋声と

　「独歩！」
　
　チシェ猫の様に目を三日月型にして返事する国木田と

　「藤村！」

　何時もの様に、取材メモを構える藤村を従えて花袋は椚が丘学園へと向かうことにしたのだった。

　「こうして、正宗白鳥殺人事件の幕は上がったので御座います」
　「いや、上がってねー－ぞっ！江戸川！」

　ついでに、面白そうに勝手についてきた江戸川乱歩も連れて。

　「司書さんも学校だからね、国木田。電車賃は？」
　「僕が出すよ。島崎」
　「お、悪ぃーな。秋声」
　「お弁当のお握りは青いのが宜しいですか？それとも赤？」
　「俺は、街で美少女に会いたいな～～！」

　だ、大丈夫か？このメンバー？
　次回、「知名度の時間」へと続く。

　「有島！ほら、ふっーってして！！」
　「ムシャ……。有島は未だ来てないぞ。本の中だ」
　「大丈夫だよ！ほら、遺影！」
　「葬式みたいになってんぞ…」

　ケーキを片手に会話をする白樺派を見て、無頼派は

　「安吾も長かったしな…」
　「ぷっ。馬鹿が何かやってる…シャメ」
　「まぁ、何時か来るだろ」

　