国定図書館の暗殺者 (ページ27)

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夏休みの宿題回収の時間ページ27

「…し、に…神？」

　其れは暑い暑い、うだる様な夏の日だった。私たちは総出で夏休みの殺せんせー暗殺訓練に精を出していた。私もスコープを拭いたり、ナイフの手入れをしていた。
　私が声をした方へ顔を向けると、渚とビッチ先生の師匠・ロヴロさんがいた。二人は向かい合って、話し込んでいる。暗殺の才能がありそうな渚は興味もあるのか、と私は半分ほど耳を傾けていた。

　「ありふれたあだ名だろう？だが、死を扱う我々の業界で死神と云えば」

　「唯一絶対、奴を指す」

　私は急に鼓動が早くなったのを感じた。徐々に背中が寒くなっていく。
　殺せんせーは物凄いターゲットだ、と理解していたつもりだがここまでとは……。

　「……きゃ。大丈夫」

　私は一人で大きな木に向かって呟いた。
　誰もこの任務で死ななければ良いんだけど……。首筋を流れる汗は、何時の間にか冷や汗に変わっていた。

　そして、夏の任務では、殺せんせーを殺すことは出来なかったけど一回り成長することが出来た。任務だけじゃない、烏間先生とビッチ先生の仲も少し進展した様だし……！此からも、暗殺、頑張るぞぉ！

　私はその後、いつも以上に鍛錬に励み、司書業務も頑張った。

　……二学期が始まる前。

　「もしもし、館長？」
　『あぁ、A君か。君に報告しておかなければならないことがある』

　新しい書類だろうか。私は青くなった。
　何しろ、この、特務司書という仕事は書類が多い。
　【○○に関する研究レポート】・【侵蝕者の生態についてのレポート】・【文豪達の生活に関するレポート】・【並びに生命活動に関してのレポート】……etc.

　「こ、これ以上書類が増えたら。わ、私は倒れますよ」
　『ん？あぁ、違う違う』
　「違う？」

　明るい声で否定された。

　『君の元に先日、真っ白いノートが届かなかったか』
　「届きました」

　先日学校から帰ってきた時のこと。廊下を歩いていたら、へルン先生が走ってやって来て、茶色の包みを私に手渡してきた。仲には何も書かれていない本が入っていたのだが……。

　「それが？」
　『うん。それは、他の図書館の文豪には端末を使うことが出来ない先生が多いらしい』
　「はぁ」
　『その、本は常に持っていてくれ。文豪が本当に必要な時に、真っ直ぐに司書の処へこれる様になっている』
　「へぇ、其れは便利ですね」
　『だろう。じゃぁ、二学期も頑張って』

　私は電話を切った。

　「あ」

　宿題をするのを忘れた。